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書評「X線診断へのアプローチ5 腹部実質臓器―肝胆膵腎副腎他」 フリーアクセス
著者: 打田日出夫1
所属機関: 1奈良医科大学
ページ範囲:P.84 - P.84
文献購入ページに移動本書もこの方針を貫いて腹部単純X線診断のポイントと最終診断への過程が実例から解説されており,腹部単純像からどの程度の情報が得られ,これを正しく読影することが確定診断と次の診断法の選択にいかに大切であるかを教示している.超音波,CT,血管造影などの各種のmodalityが発達・普及した今日,腹部単純X線写真は診断的価値が低くなったように錯覚され軽視されるきらいがするが,これは非常に誤った危険な考え方であり,腹単が確定診断や診断の手掛かりとして重大な役割を持つ場合があることを銘記しておくべきである.腹単は胸部や骨に比べれば診断的置位づけが低いことがあるにしても,これを疎かにすることにより確定診断を遅らせたり誤った方向へ進んだりすることも少なくない.腹単は他の画像では得ることができない情報を提供し,1枚の写真で確定診断に結びつくこともあるし,診断を進めるうえでの指標として役立つことも多い.もちろん,疾患の種類と拡がりにより腹単の役割は異なり,各臓器内に限局する小病変の診断には無力であるが,異常ガスや石灰化像の発見,肝・腎・腰筋などの辺縁や側腹線などの異常を腹単からチェックすることは種々の疾患を診断するうえに非常に大切である.何といっても1枚の単純X線写真で腹部全域の骨格,軽部陰影,ガス像,石灰化像などを同時に捉えることができる強みがあり,これらの異常を相互に関連させながら診断を進めることができる絶妙さがある.更に超音波やCTで得られた情報を腹部単純X線診断にフィードバックさせることにより,腹部単純写真の論理的読影による深さと妙味が倍加して一層理解しやすくなる.たとえば,flank stripe,hepatic angle,腎や腰筋辺縁などの明確な同定と,これらの不鮮明性の病態が従来よりも論理的に具象化されて理解できる.
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