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文献詳細

雑誌文献

胃と腸22巻3号

1987年03月発行

文献概要

病理学講座 消化器疾患の切除標本―取り扱い方から組織診断まで(3)

切除標本の取り扱い方から固定法まで

著者: 望月孝規

所属機関:

ページ範囲:P.349 - P.354

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 Ⅰ.固定液に入れるまでの間に,切除標本に生じる人工産物あるいは損傷について

 切除した臓器を固定液に入れるまでに,その臓器の一部分あるいは全体に,人工的変化を生じさせぬように注意しなければならない.臓器が切除されてから固定までの間に,どのような人々の手を経て,どのように取り扱われるかは施設により異なり,その間に自己消化,乾燥,暴力による損傷が起こる可能性が秘められている.切除胃の詳細な組織学的検索を行った,かの有名なKonjetznyは,lebenswarmの状態,すなわち体温がまだ保存されている状態で固定夜に入れ,完壁な組織学的標本を作製していた.固定までの手続きの1例を挙げると,虎の門病院や駒込病院では,切除あるいは剔出された臓器は直ちに病理検査室に送られ,消化管の場合は病理医師によって切り開かれ,その病変は直接術者に示されるか,インターフォンによって術者に伝えられ,必要に応じて断端浸潤の有無を知るために,その部位の凍結切片が迅速に作製されている.このようなシステムを保持するためには,敦練した病理医師と良い施設が必要である.また聞くところによると,かつて千葉大学の診断グループの医師が行ったごとく,重要な症例の場合には内科の診断を行った医師が手術室まて出掛けて行き,切除された胃を切り開いて術者に示した後,写真撮影を行って固定するというやり方もあり,病変の性状や拡がりについて,あらかじめ執知している医師がこれを行うことは一理ある.しかし,すべての症例をこのやり方で処理するというシステムを確立することは難しい.

 以下,固定までの間に介在してくるいろいろの手続きとその際に人工産物の生ずるおそれについて述べる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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