今月の主題 小さな大腸癌―早期診断のために
主題
10mm未満の大腸癌―その肉眼的な特徴と深達度判定法
著者:
味岡洋一1
渡辺英伸1
若林泰文1
内田克之1
山口正康1
所属機関:
1新潟大学医学部第1病理
ページ範囲:P.421 - P.430
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要旨 外科切除大腸にみられた10mm未満の大腸癌23例を対象として,その肉眼的特徴および肉眼的深達度判定法を検討した.m癌は18/23(78.3%),sm癌は5/23(21.7%)であった.早期癌全体からみた10mm未満の癌の深達度別発生頻度はm癌で18/70(25.1%),sm癌で5/47(10.6%)であった.10mm未満の大腸癌は決してまれなものではなく,sm癌も存在するので,小さな病変であってもsm癌の可能性を念頭に置く必要がある.肉眼型をみるとm癌には広基性が比較的多く10/18(55.6%),sm癌ではⅡa+Ⅱc型と有茎性とが各々2/5(40%)ずつを占めた.一般に大腸sm癌の肉眼的判定法には胃癌のそれが適用でき,(1)無構造な表面性状―癌のsm浸潤を示す所見―sm癌37/47(78.7%),(2)病変周囲粘膜の押し上げ像と外反像―癌がsmに塊状に存在する所見―癌がsmに塊状に存在する病変の23/28(82.1%),(3)表面陥凹の存在―従来sm癌の肉眼的指標とされる―sm癌26/47(55.3%)が挙げられた.しかし有茎性の病変は一般に癌のsm浸潤量が少ないため,上記所見を欠くことが多かった.10mm未満の癌のsm浸潤判定法は一般の大腸sm癌のそれと同じで,10mm未満の癌5例のうち4例が上記のいずれかの肉眼所見を示した.いずれの肉眼所見も示さなかった1例は有茎性の病変であった.