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文献詳細

雑誌文献

胃と腸22巻4号

1987年04月発行

文献概要

今月の主題 小さな大腸癌―早期診断のために 主題研究

拡大内視鏡検査法による小さな大腸癌の診断

著者: 多田正大1 水間美宏1 清水誠治1 渡辺能行2 魚住玄通2 川井啓市2

所属機関: 1京都第一赤十字病院第2内科 2京都府立医科大学公衆衛生

ページ範囲:P.443 - P.449

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要旨 大腸隆起性病変の存在診断のために内視鏡検査は不可欠であるものの,その質的診断に関して,特に小さい病変の良悪性の鑑別のためには必ずしも内視鏡検査の診断能は高くない.そこで拡大大腸ファイバースコープを用いて,大腸ポリープの表面構造を10~35倍に拡大観察することによって,腸腺開口部(いわゆるpit)の形態,配列などを詳細に検討すると,これらは円形型,管状型,溝紋型,そして不整型に分類される.早期大腸癌の表面構造は大多数で不整型を呈するものの,一部で良性ポリープと同様の形態を呈する場合もみられる.これらは癌の占居範囲が小さい場合であるが,10~35倍の拡大率では小さい癌の診断には限界がある.そこで拡大倍率170倍の超拡大大腸ファイバースコープCF-UHMを用いて大腸粘膜を観察してみると,細胞レベルでの内視鏡診断が可能になる.すなわち大腸癌の診断能は構造異型の診断学から細胞異型の診断学へと展開することができる.今後,拡大内視鏡検査法を広く臨床に導入することによって,大腸粘膜の病態生理の解明への糸口となり,小さい大腸癌の診断のみならず,その発生と増殖のメカニズムが解明されることが期待される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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