研究
微小早期大腸癌(5mm以下)の内視鏡学的,組織学的検討
著者:
岡本平次1
佐竹儀治1
坪水義夫1
藤田力也1
佐川文明2
所属機関:
1昭和大学藤が丘病院消化器内科・松島病院内視鏡部
2昭和大学藤が丘病院病理科
ページ範囲:P.465 - P.471
文献購入ページに移動
要旨 5mm以下の大腸癌を“微小大腸癌”と定義することを提唱した.自験9例の微小大腸癌(m癌8例,sm癌1例)を内視鏡学的,組織学的に検討し,次のような結果を得た.(1)微小癌の分布は直腸に3例と最も多く存在し,次いでS状結腸,上行結腸の2例,横行結腸,盲腸1例の順であった.右側結腸にも3例,33.3%存在したのは注目される.なお4例,44.4%は微小癌以外にも隆起性病変がみられ,うち2例は早期癌(m癌)が1病変ずつ認められた多発癌例であった.(2)9例すべてが隆起性病変であり,平坦型ないし陥凹型の病変は認められなかった.隆起の形態は無茎性(扁平に近いのも含む)5例,亜有茎性3例,中心陥凹を伴うⅡa+Ⅱc型が1例であった.内視鏡的には4例に退色調,血管拡張模様,出血,緊満性,充実性がみられたが,積極的に悪性を示唆する所見ではなかった.しかし1例は,頂部が決壊し白苔を伴う潰瘍面を形成し,その辺縁は不規則で発赤もみられ,明らかな悪性所見を示した.残りの4例は何ら特徴的所見はなく,切除し組織学的検索後初めて悪性と診断された.(3)組織学的には,いずれも分化型腺癌であった.carcinoma in adenomaが4例で最も多く認められ,adenoma in carcinoma3例,polypoid carcinomaは2例の順であった.深達度に関しては8例(88.9%)が粘膜内に止まっており,1例(11.1%)のみが粘膜下層に腺癌のmassive invasionが認められた.