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文献詳細

雑誌文献

胃と腸22巻6号

1987年06月発行

今月の主題 胃の腺腫とは―現状と問題点

主題

胃の腺腫についての考察

著者: 望月孝規

ページ範囲:P.633 - P.640

文献概要

 はじめに

 病理形態学の総論では,腺腫についての総括的定義としては,第1に腺腫は増殖性病変,すなわち腫瘍であり,第2に良性の変化である.この良性という判断については,問題の存するところで,例えば予後がよいという物差しをもってすれば,潰瘍性病変を伴わない胃の粘膜内癌(mの早期胃癌)は,その状態で削除されれば,完全治癒するゆえに良性であるので,腺腫と言ってよいということになろう.このような考えが,大腸においては主張されており,胃における腺腫についての考え方にも,影響を及ぼしている.

 組織学的には,第1に癌腫と区別されなければならない.癌腫のごとく,腫瘍細胞が自己および他の細胞や組織を破壊して,増殖せず,したがって他の臓器へ転移せず,本来の発生部位において境界のはっきりした細胞巣あるいはorganoidの組織を形成し,その増殖の速度は遅い.腺腫を構成する上皮細胞は本来の臓器の上皮細胞に似た構造あるいは機能分化を示す場合が多い.もしその部位の上皮細胞のいずれとも類似していない,癌腫とは言えない上皮細胞群が見出された場合には,むしろ迷芽腫とされてしまうであろう.特に,内分泌臓器では,本来の細胞の機能を示す過形成性細胞との区別が難しい場合がある.胃と大腸においては,上皮細胞の機能分化,細胞交代の速度と方式が,他の実質臓器とは異なるので,そこでの腫瘍の形態と発生の様式が特徴的になっている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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