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文献詳細

雑誌文献

胃と腸22巻7号

1987年07月発行

今月の主題 腸結核と癌

主題症例を見て

“大腸結核と癌の合併症例”を垣間見て

著者: 中村恭一1

所属機関: 1筑波大学基礎医学系病理

ページ範囲:P.853 - P.853

文献概要

 本号の“大腸結核と癌の合併症例”特集は癌と結核のただ単なる重なりではなく,“結核と癌の因果関係”ということの考察に大変参考となりました.大腸結核と癌の合併症例12例を通覧した感想を述べてみたいと思います.

 まず,大腸結核と癌の重なっている病変の特徴として,その存在部位は上行結腸~横行結腸であることが挙げられます.癌肉眼型については,通常の大腸癌のそれが,いわゆるBorrmann 2型であるのに対して,隆起部分の少ない扁平な形を呈しているという傾向がみられます.それは,潰瘍性大腸炎の大腸に発生した癌の肉眼形態と同じです.これらのことは,癌の発育の場と癌の発育様式との関係を私たちに教えてくれます.すなわち,正常大腸壁に発生した癌は,リンパに富んだ正常大腸壁で膨張性に発育してBorrmann 2型を示しますが,結核あるいは潰瘍性大腸炎が一時的に治癒した状態の大腸に発生した癌ではそうはいきません.そこは広範な線維化のため組織が密で硬く,また組織間隙のリンパは少ないですから,そこに発生した癌の発育は当然のことながら膨張性に発育することができません.癌組織型は通常の大腸癌の場合と同じで,乳頭管状腺癌が多いようです.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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