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文献詳細

雑誌文献

胃と腸22巻8号

1987年08月発行

文献概要

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書評「新消化器病学[2]肝・胆・膵」

著者: 佐藤寿雄1

所属機関: 1東北大学

ページ範囲:P.922 - P.922

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 内視鏡的逆行性胆道膵管造影法がMcCuneらによって開発されたのは,今から約20年前の1968年であるが,1970年代にはごく一般的な検査法として広く普及し,超音波検査法やコンピューター断層撮影法あるいは腫瘍マーカーなどの出現と相俟って肝・胆道・膵疾患の診断法は飛躍的な進歩を遂げた.一方,肝・胆道・膵疾患の治療法に目を向けると,閉塞性黄疸に対する超音波映像下で経皮的胆道ドレナージ,肝癌に対する塞栓療法,あるいは内視鏡的十二指腸乳頭括約筋初開術,消化管ホルモンの動態を指標としたより生理的な胆道再建法の開発,重症急性膵炎時の多臓器障害の病態の把握に伴う集中治療部での全身管理法,切除不能膵癌に対する放射線治療や温熱療法および動注化学療法などの集学的治療など数え上げればきりがないほど数多くの試みがなされ,着々とその成果が上がりつつある.日常診療を行う際には,これらの診断法と治療法を正しく,しかも効率よく使い分けることを常に念頭に置かねばならず,特に経験の浅い初学者にとってはその指針となるものが必要である.

 このような状況の下で,本書は研修医やレジデントなどの初学者を主たる対象として,肝・胆道・膵疾患を広くカバーし,偏りがなく,しかも最新の知見を伝えることを目的として編まれている.現在第一線で活躍している最先端の臨床家102名が,各々の専門分野を分担して執筆している点は本書の特徴であり,内容の一部に若干の重複がみられるものの,総じて必要最小限の要点のみが簡潔に記述され,大変読みやすいものになっている.また,本書の構成は,肝・胆道・膵の検査法・肝疾患,胆道疾患,膵疾患の4つの部分から成り立ち,検査法の項目では,個々の検査の具体的な施行方法およびその診断能と限界が示されているので,初学者が各検査法の位置づけを知るうえで極めて参考になるものと考えられる.各疾患別の項では,それぞれの疾患の概念と病態,治療法およびその予後が最新の知見と成績を基にして簡潔明瞭に述べられており,各疾患に遭遇した場合,実用的な教科書としての機能を十分に発揮できる内容を備えている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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