研究
早期大腸癌の病理学的検討
著者:
下田忠和1
池上雅博1
鄭鳳鉉1
石川栄世1
所属機関:
1東京慈恵会医科大学病理
ページ範囲:P.967 - P.976
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要旨 早期大腸癌の発育形態は粘膜内隆起性発育を示すもの(PG+)と,粘膜下浸潤による隆起性病変(PG-)とに分けられた.PG(+)は早期癌132病変中114病変(86.4%)で,その大きさは平均17.9mmであった.このうち59病変は有茎性で,2例を除いて腺腫由来の癌であった.これらの粘膜下浸潤は極めて頻度が低く(10.2%),かつそのほとんどは微小浸潤であった.広基性を示すPG(+)癌は平均20.5mmで,これも高頻度に腺腫由来の癌であった(89.1%).粘膜内隆起性発育を示さないPG(-)早期癌は18/132病変(13.6%)あったが,その大きさは平均10.7mmとPG(+)癌に比較して小さかった.これらはすべて粘膜下層に結節性浸潤を示し,かつリンパ管および静脈内浸潤が高度にみられた(72.9%).PG(-)癌は腺腫併存が全くみられず,PG(+)癌と異なり10mm以下の小さいde novo病変より粘膜下に浸潤した癌と考えられた.