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文献詳細

雑誌文献

胃と腸23巻11号

1988年11月発行

症例

食道のポリープ状hamartomaに発生した腺扁平上皮癌の1例

著者: 中川公三1 小西二三男2 中泉治雄1 木谷栄一1 津田昇志1 山崎信1

所属機関: 1福井県立病院外科 2金沢医科大学第1病理

ページ範囲:P.1271 - P.1278

文献概要

要旨 患者は67歳男性で,1972年に胃潰瘍で胃切除を受けた.1977年12月の術後X線検査中に上部食道内腔に下垂するポリープ状の腫瘤を指摘された.内視鏡検査では,門歯より19cmの所に存在する表面平滑で,食道粘膜と同じ色調の細長いポリープであった.生検組織学的検査では腫瘍性のない扁平上皮という判定であり,嚥下障害などの訴えもなかったので経過観察とした.その後,約1年ごとにX線と内視鏡検査をしたが,表面の凹凸が増加した以外は大きな変化がなかった.1982年に入り,喉につかえる感を訴え,生検を施行したところ,低分化扁平上皮癌の診断を得た.患者の状態と腫瘍の性状を考慮して,1982年5月に内視鏡的腫瘍切除を施行した.切除された腫瘍は3.0×1.4cmの親指様のポリープで,表面の一部が凸凹していた.組織学的には,内部はリンパ節様組織の大きな結節,脂肪組織,食道腺,食道腺導管の囊胞などで構成され,その表面粘膜と粘膜下部の大部分は扁平上皮癌で覆われていた.一方,表面粘膜の一部と腫瘍内部の一定の部分は低分化扁平上皮癌と混在する腺管構造部を認め,管腔内,腫瘍細胞の胞体内にアルシアンブルー,ムチカルミン染色陽性の物質が証明された.以上より食道のhamartomaに発生した腺扁平上皮癌と診断した。この腫瘍は粘表皮癌とも解釈され,発生様式と治療法について考察を加えた.術後4年6か月を経過したが再発はない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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