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今月の主題 胃・十二指腸潰瘍と超音波内視鏡 座談会
胃・十二指腸潰瘍と超音波内視鏡
著者: 中村常哉1 岩渕三哉2 西沢護3 望月福治4 小越和栄5 福地創太郎6 中澤三郎7
所属機関: 1名古屋掖済病院消化器科 2新潟大学第1病理 3東京都がん検診センター 4仙台市医療センター内科 5県立がんセンター新潟病院内科 6虎の門病院消化器科 7名古屋大学第2内科
ページ範囲:P.526 - P.537
文献購入ページに移動超音波内視鏡(以下EUSと略す)が最初開発された段階では,膵癌の診断とか,消化管に隣接する臓器の診断というようなことに1つの大きな目的があったかと思いますが,1980年から1983年ぐらいにかけてEUSによって胃壁の5層構造がかなりわかってきました.そして,その組織学的な裏付けもできてきた.そういうことから胃粘膜下腫瘍の診断はもとより,胃癌の深達度診断とか,胃・十二指腸潰瘍の深達度を診断することが可能になってきました.従来のX線とか内視鏡では,特に内視鏡は粘膜表面から見る,X線は胃壁の硬化ということをかなり加味できるわけですが,それにしても正確な潰瘍の深達度を診断するということはなかなか困難であったわけです.内視鏡的に言えば,びらんとUl-Ⅱ以下の潰瘍をある程度区別できるとか,あるいは穿通性潰瘍のようなものはある程度区別できるというようなことは可能であっても,正確な深達度を診断することは困難でした.特に潰瘍が治癒過程に入って浅くなると,その潰瘍の深達度がどの程度かということはなかなかわからない.実際に潰瘍の治癒過程をみてみると,なかなか治らない難治性の潰瘍があります.その難治性潰瘍については,X線内視鏡的な所見の特徴がいろいろ論じられてはいるわけですが,実際には治療する前には,その潰瘍が難治であるかどうか,予後について確言できないのが,従来の診断学の現状だと思います.治療してみて初めてこれが難治であると,一般には3か月以上治療して治らないのが難治であるという,そういう解釈が現実には行われています.
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