文献詳細
今月の主題 微小胃癌診断―10年の進歩
主題
文献概要
要旨 超微小胃癌の観察から胃癌の組織発生の問題を再考した.腺管を形成する胃癌の発生母地について考察するために,顕微鏡的検索で偶然発見された0.3~3.0mm,平均1.5mm径の超微小管状腺癌(supermicrocarcinoma;SMC)47病巣と,癌を疑うが確診できない0.2~2.0mm,平均0.8mm径の超微小異型腺管巣(仮称Tub-X)38病巣について,その周囲粘膜の性状を検討した.両者の周囲粘膜の性状は酷似しており,SMC,Tub-Xの周囲粘膜の性状から,最も頻度の高い管状腺癌の発生母地は,胃固有腺が残存している粘膜で,細胞増殖帯が完成度の低い非定型腸上皮化生を産生している状態か,いまだに腸上皮化生が生じていない萎縮した粘膜と考えられた.腸上皮化生は腺管腺癌の発生に絶対的な必要条件ではないと結論された.腺管を形成しない癌の組織発生を検討し印環細胞癌の多くは萎縮のない,あるいは軽い胃粘膜の腺頸部増殖帯に発生すると考えられた.また,高分化管状腺癌と印環細胞癌が共存する微小癌を完全連続切片標本で観察し,印環細胞癌の発生モデルを提示し,同時に胃癌の形態的多様性について具体的に示した.観察結果を総合して次のように結論した.①胃癌は,どのような状況の胃粘膜からも発生する.②胃癌は細胞増殖帯の癌化によって,多くの場合,芽出発生(budding)する.腺管を形成する癌は多数の癌細胞が連結して芽出し,腺管を形成しない癌は単数あるいは少数の細胞で芽出する.③萎縮のない粘膜に発生する胃癌は腺管を形成しにくく,萎縮した粘膜に発生する癌は腺管を形成しやすい.④胃癌の組織形態は周囲の胃粘膜と連関して,多分に可変的である.
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