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文献詳細

雑誌文献

胃と腸24巻12号

1989年12月発行

今月の主題 小さな未分化型胃癌―分化型と比較して

主題

経過観察からみた小さな未分化型胃癌―内視鏡的診断指標の検討

著者: 吉田茂昭1 大津敦1 山口肇1 斉藤大三1 田尻久雄1 吉野光也1 藤井隆広1 小黒八七郎1 廣田映五2

所属機関: 1国立がんセンター内科 2国立がんセンター研究所病理

ページ範囲:P.1379 - P.1386

文献概要

要旨 小さな未分化型胃癌の診断上の問題点を明らかにすることを目的として,悪性の確診が得られないまま6か月以上,5年以内の経過観察がなされた最大径2cm以下の胃癌36例(分化型腺癌19例,未分化型腺癌17例)の確診前の内視鏡所見をretrospectiveに検討した.これらの確診前の内視鏡所見は,①異常所見の認められない無病変群,①小褪色域を示す褪色群,①発赤,びらん所見を示すびらん群,①潰瘍あるいは潰瘍瘢痕像を示す潰瘍群,の4群に大別可能であった.組織型別に各群の頻度をみると,未分化型胃癌では,無病変群の頻度が高く(7例41%),これらのうちにはⅡbの経過例(2例)や,突然のように病変像の出現する症例(2例)が含まれており,確診前での病変像の指摘は極めて困難であった.これに対し,分化型胃癌では潰瘍群とびらん群が15例(79%)と大半を占めており,微小胃癌の経過観察例を除き,確診前での病変像の指摘は十分に可能であった.しかも,これら15例の確診前の内視鏡所見をretrospectiveに検討すると,7例(47%)に悪性を疑えた.また,今回検討した各群のうち,褪色群は最も少なく,3例のみであったが,いずれも未分化型胃癌であり,小さな未分化型胃癌における1つの特徴像と考えられた.以上の成績から,小さな未分化型胃癌の診断は分化型胃癌に比べ,明らかに困難であろうと考えられる.今後,より多くの症例を発見するためには,悪性所見に乏しい潰瘍,あるいは潰瘍瘢痕に対する積極的な生検診断,小褪色域に対する注意深い観察が不可欠と思われる.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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