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文献詳細

雑誌文献

胃と腸24巻3号

1989年03月発行

文献概要

今月の主題 大腸腺腫と癌(2) 主題

大腸腺腫と癌の関係―私の診断基準より

著者: 喜納勇1

所属機関: 1浜松医科大学第1病理

ページ範囲:P.261 - P.263

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はじめに

 直径2cm程度の大腸癌の大部分は進行癌の小さい形,いわゆる小さいBorrmann型を呈する.そして,このような形態を呈していて一部に腺腫成分があることはまれである.直径1cm以下の病巣は,flatの隆起か,無茎性あるいはせいぜい亜有茎性ポリープの形状を呈するのが大部分である.陥凹型は少数である.そして,組織学的にはすべて癌から成っているか,癌と腺腫が共存している.したがって1cm以下の病巣を集めて解析することが組織発生の解明に最も重要であると考えられる.

 2cm以上の大きいポリープを形成する腺腫の一部に癌が共存する症例は少数例しかないので,大腸癌の組織発生の主流たりえない.

 1cm以下の病巣で,腺腫と癌とが共存している場合,直ちにそれをadenoma-cancer sequenceとみなしてはならない.なぜならば,adenoma-cancer sequenceとは両病変が異時性(腺腫が先で,癌が後)に発生することを意味しているのであるからである.両病変が小さい場合は異時性でなく同時性発生と考えるべきである.同時性とは文字どおり同時という意味でなく両者の差が例えば1年以内という意味である.大腸腺腫は実験データから計算すると1cmの大きさになるのに数か月しか必要としない(cell lossを0とすれば).したがって,成長する腺腫は1cmの大きさに達するのに1年を必要としない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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