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今月の主題 大腸腺腫と癌(2) 主題
大腸腺腫と癌の関係―私の診断基準より
著者: 廣田映五1 板橋正幸1 飯島直人1 長谷部孝裕1
所属機関: 1国立がんセンター研究所病理部
ページ範囲:P.269 - P.278
文献購入ページに移動近年,わが国における大腸癌は増加の傾向にある.幸い医療関係者はもちろんのこと一般にも大腸癌に対する関心が高まり,集団検診の受診率も上昇し,年々,より小さい早期の癌や各種前癌病変,特に腺腫性ポリープが数多く発見され内視鏡的生検やポリペクトミーがなされるようになってきた.したがって,早期癌の病理形態とその組織発生的研究が多くの研究者によって,しかも多数例で行われている.
早期癌や,いわゆる前癌病変と言われる病巣を詳細に検討することにより,大腸癌の組織発生の全貌が次第に明らかとなりつつある.なかでも大腸腺腫と癌の因果関係がかなり明らかとなってきている.しかし,現在発見されている多くの大腸癌の発生過程に,どの程度腺腫が関連しているか否かについては,いまだ議論の多いところである1)2).つまり大腸癌の発生過程において腺腫由来を主軸とする考え方と,腺腫を介さない癌が大多数であるという考え方とがある3)~5).しかし,後者の説を実証しうるには,十分な症例や統計的資料はまだ示されておらず,いわば傍証となる事実のみが呈示されていると言っても過言でない.いずれにしても,現時点で発見されている早期癌の病理形態的特徴を,種々なる見地から詳細に記録し,その前癌病変との関連をみておくことが重要である.というのは癌化という現象を分子遺伝子学的レベルで説明される時代になってきているが,これらの資料を基盤にした基礎的研究がなされることが肝要である.更にわが国は大腸癌の発生率が最も低い国の1つであることから,高罹患率の国における大腸癌と比較検討するうえでもこれらの資料は非常に大切なことであろう.
一方,早期大腸癌と進行癌の形態学的なつながりを明らかにすることは,大腸癌の自然史の全貌を明らかにすることとなるであろう.以上のような臨床病理学的な研究を始める前に,大腸粘膜における増殖性,良性腫瘍,悪性腫瘍,良・悪性境界領域などの病変の病理組織学的判定基準が標準化されなければならない.
そこで,本稿では当国立がんセンター病院で手術切除された腺腫や早期大腸癌を中心に,病理形態的統計やわれわれの組織学的判定基準を提示し,現時点における大腸癌の形態発生についての考え方に言及したい.
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