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文献詳細

雑誌文献

胃と腸24巻6号

1989年06月発行

文献概要

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海外文献紹介「家族性大腸腺腫症の多彩な病像」

著者: 吉井由利1

所属機関: 1愛知県がんセンター消化器内科

ページ範囲:P.644 - P.644

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 The protean manifestation of familial polyposis coli; Nelson RL, Orsay CP, Pearl RK, et al (Dis Colon Rectum 31: 699-703, 1988)

 家族性大腸腺腫症(FPC)の臨床像は画一的で,一定の経過をとるので治療法選択の余地はほとんどない疾患と考えられているが,著者らが過去5年間にシカゴ市内のWest Side Medical Centerの3病変で扱った16家系33例の患者について再検討した結果,むしろ非常に臨床像は多彩であることがわかった.検討対象33例のうち家族歴が証明されない発端者が5例(31%)あり,すべて30歳以下であった.発見された癌病巣12個のうち8個(67%)は直腸にあり,そのうち3個は結腸切除兼回腸直腸吻合術(TACIRA)施行例にみられた.癌発生年齢について,異なる家系の3例は20歳以下に,12個の癌のうち7個は31歳以下の患者に発生した.ポリープの増大の速度に個人差があり,TACIRA後に直腸ポリープは消失しなかった.TACIRA施行者17例中3例(18%)は術後各々4か月,7か月,20年後に直腸癌になった.発端者の半数に初回検査時癌があったのに対し,スクリーニングしたFPC家系の17例では3例(18%)にしか癌がなく,すべてDukes'AまたはB1の病巣であった.腸外腫瘍には胃十二指腸ポリープと後腹膜desmoid tumorが3家系にみられた.これらの経験から著者らはFPCの治療指針を次のように立てている.すべての有危険者のスクリーニングは10歳から少なくとも20歳まで毎年,その後は40歳まで定期的に内視鏡検査を行う.初回検査で直腸にポリープがないか,ない状態にした場合,TACIRAで十分である.desmoid tumorが初回開腹時に発見されてもTACIRAでよい.TACIRA施行者は生涯少なくとも半年ごとに直腸鏡を行い直腸を再びポリープのない状態にしておかなければならない.直腸粘膜切除兼回腸肛門吻合術は,直腸ポリープが密生型の患者,生涯内視鏡的追跡が無理な患者,発癌の危険性がない治療を希望する患者に行うべきである.直腸癌を伴う患者には根治的結腸直腸切除術が行われるべきである.要は年齢に関係なく診断時点で結腸切除術を行うべきである,更にFPC患者は全員上部消化管内視鏡検査を行うべきで,特に傍乳頭部癌の危険性が高いGardner症候群では注意を払う必要がある.腸外腫瘍の出現の仕方は,FPCでも遺伝様式で異なるので,画一的な検査スケジュールでなく個人,家系に合わせて行うのがよい.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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