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文献詳細

雑誌文献

胃と腸24巻6号

1989年06月発行

文献概要

今月の主題 急性胃粘膜病変(AGML) 主題

内視鏡後のAGML―その現状と対策

著者: 多賀須幸男1 土屋春仁1 桜井幸弘1 伊藤慎芳1 樋上義伸1 山崎忠男1 南雲久美子1 池上文詔2

所属機関: 1関東逓信病院消化器内科 2関東逓信病院健康管理科

ページ範囲:P.653 - P.660

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要旨 上部消化管検査後に発症するAGMLについて検討した.当院では1987年までに17例を経験し,その頻度は過去12年間の全検査例43,499回について1,000件当たり0.36件に相当する.1988年の全国アンケート調査では1,000件当たり0.7件であり,小施設で頻度が高い傾向があった.患者が検査後に疼痛を訴えても大施設では検査を繰り返すことが困難なためと考えられる.患者の検査経験回数,生検の有無に有意差はなく,40歳台,男性に多い傾向があった.患者は検査後3~8日で激痛を覚え,再検査では白苔もしくは黒苔で覆われた島状や線状のびらんが主として前庭部にみられる.通常の抗潰瘍療法により数日で治癒する.内視鏡後のAGMLは消化性潰瘍,悪性腫瘍例で期待値より低く,アニサキス症,食道静脈瘤,無所見例で高かった.斜走筋を欠く前庭部は検査時の送気で著明に伸展され,強い蠕動性の収縮が加わって生じた虚血が,粘膜の抵抗が低下したり酸分泌が過剰である症例でAGMLを誘発するものと考えられた.消化性潰瘍やポリペクトミー例で発生が少ないのは抗潰瘍薬が処方されるためであろう.内視鏡検査後のAGMLはまれであるが,その発生を予防するには過剰の送気を避けること,検査後数日間H2ブロッカーを投与することである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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