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文献詳細

雑誌文献

胃と腸24巻8号

1989年08月発行

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書評「肝臓外科の実際」 フリーアクセス

著者: 中山和道1

所属機関: 1久留米大学

ページ範囲:P.965 - P.965

文献概要

 近年の画像診断の進歩により肝内腫瘤性病変の発見が容易となり,また術中エコー,最新機器の普及により肝切除術の安全性が向上して,肝切除症例は急速に増加している.現在は,編者が序文で言及しているように,一般の施設において,消化器外科医なら誰しもが肝切除を正確にしかも安全に行うことが要求される時代となりつつある.つい十数年前まで,肝硬変合併例の肝切除において術中出血,および術後肝不全との闘いに四苦八苦していたことを思い起こせば,昔日の感を禁じえない.先達者たちの業績に深謝するばかりである.本書はその先達の手による肝臓外科の実地書であり,肝臓外科のノウハウが惜しみなく掲載された最良のガイドブックである.

 本書は肝臓の解剖,画像診断,肝予備能を含めた機能検査,種々の手術法,進行肝癌の治療法,更には肝移植,肝臓外科の歴史など全7章,368ページに及んでいるが,従来の成書にとらわれず,肝臓外科医が臨床で経験する率直な疑問に明確に答えてくれるものとなっている.解剖の章においては初心者に必要な基本的な知識のみならず,intersegment plane,肝内門脈枝分岐形態のvariationについて述べ,区域,亜区域切除の問題点にまで言及している.手術法に関しては種々の手術法が丁寧に解説されているが,それぞれに執筆者の手術における“コツ”が述べられており,また術中の合併症,偶発症への対応の仕方なども記載されている.止血法と新しい機器の紹介も,これから肝臓の手術を行おうとする者にとっては有用であろう.米国おいて多数の移植を手掛けられている執筆者による肝移植の章は,肝移植の現況を忠実に理解することができ,移植のみならず,折しも進行癌に対する血行再建を伴った拡大切除が試みられている現状において,肝臓外科医のみならず消化器外科に携わっている者すべてが必読であると感じられる.そのほかにも術中画像診断の有用性と限界など,「肝臓外科の実際」というタイトルどおり,臨床面の実際的なことを十分に紹介した本と言える.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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