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文献詳細

雑誌文献

胃と腸25巻1号

1990年01月発行

今月の主題 上部消化管X線検査の現状の反省と将来―検査モデルを求めて

序説

上部消化管X線検査の現状の反省と将来―検査モデルを求めて

著者: 大柴三郎1

所属機関: 1大阪医科大学第2内科

ページ範囲:P.11 - P.12

文献概要

 私の栖から病院まで距離にして300~400メートルにすぎない.その途上約100メートルの間桜の木が5~6メートル間隔で数十本植えられている.春ともなれば少しピンクがかった白い花が枝一杯に見事に咲きそろう.4月になると“あそこの桜はどうですか”と毎年のように問われる.昨年も同じ質問を受けた.そこで,はて!!と考えてみると,いつごろから芽が膨らみ,赤味がさし,ちらほら花が開き,3分から5分やがて満開となり,朝な夕な花びらを踏んで往復していたのかあまり正確に気付かない.繪心,詩心のないやぼな人間と言われればそれまでであるが,問われて初めて意識の中に入り込み,関心を持てばそれ以降はいつも意識的観察が始まる.昨年も5分咲きごろまで全く気付いていなかった.恐らく花の下を歩きながら何か考え事をしているせいだと自分を納得させている.しかし花の下を歩行中,実際には花は視角に人っており,網膜に投影され,視神経に刺激を与えているにもかかわらず,より高次元の中枢への刺激がblockされ“見えれども見えず”であるようである.ヒトの視覚にはそんなむだと言うか不注意さが結構ありそうである.

 1枚のX線写真の読影にしても漠然と眺めていれば細かい情報は意識に投影されてこない.内視鏡検査中その視角に入っている粘膜情報はすべて視野に入っているわけであるが,実際にはごく小範囲の部分のみが認識されているにすぎない.したがって観察時には視野の隅から隅まで意識的に診ていかなければならない.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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