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文献詳細

雑誌文献

胃と腸25巻1号

1990年01月発行

入門講座・1

小腸X線検査の実際

著者: 八尾恒良1

所属機関: 1福岡大学筑紫病院内科

ページ範囲:P.119 - P.122

文献概要

はじめに

 小腸のX線検査は多くの人たちが敬遠する.その理由は,①面倒で時間が長くかかる,②正常と異常像の差がわからない,③病変が発見される頻度が少なく,むだなことが多い,などのようである.

 ①は確かに理由がある.特に二重造影像を撮影しようとすれば,ゾンデをTreitz靱帯近傍まで挿入しなければならないし,挿入した後も検査が終了するまでに時間がかかることも少なくない.しかし,検査に慣れるに従って所用時間は短縮するし,後述するように前処置によってもこれを短くすることができる.そして何よりも微細な病変を美麗に描出できたときの喜びは,苦労を忘れさせるものがある.

 また,“病変の描出”を目的とせず異常の有無や“疾患の診断”を目的とする場合には,そのほとんどは経口法で,さほど手をかけずに目的を達することができる.

 ②は筆者にも覚えがある.もう20年以上も昔,小腸のX線診断を志したとき,師匠の岡部治弥先生に“小腸のX線診断は本を読んで勉強しない奴でないとだめだ”と言われた.しかしめげずに例数を重ねているうちに,今では師匠以上に小腸の病変は沢山診断したという自負を持っている.乱暴な話ではあるが,筆者には今でも“primary fold”と“secondary fold”の区別もわからないし,fragmentationやflocculation,あるいはmoulage signなどの言葉も正確にはわかっていない.わかっていなくても臨床に必要な病変や病気の診断に不自由しないから不思議である.

 要するに小腸のX線検査も胃透視と同じように,まず慣れることが大切で,慣れながら異常像と思った所見を勉強していけばよいと思う.なまじっか機能的異常像を勉強しすぎるとあまりいいことはなかろう.

 ③は昔と違って小腸病変はそれほど少ないことはない.特にCrohn病や小腸アニサキス症など,その疾病の臨床像を知っておれば,ふんだんに診断する機会があろう.上達のためにはとにかくやってみることだ.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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