今月の主題 膵囊胞性疾患―動態診断の基礎と臨床
主題症例
囊胞形成を伴う微小な膵管内乳頭腺癌の1例
著者:
錦野光浩1
甲田安二郎1
金丸仁1
寺門道之1
閨谷洋1
橋本治光1
瀬野尾一孝2
保田芳伸2
新井冨生3
中村真一4
喜納勇5
所属機関:
1藤枝市立志太総合病院外科
2藤枝市立志太総合病院消化器科
3藤枝市立志太総合病院臨床病理室
4浜松医科大学附属病院病理部
5浜松医科大学第1病理
ページ範囲:P.216 - P.220
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要旨 慢性膵炎として2年9か月経過観察した囊胞形成を伴った微小な膵管内乳頭腺癌(intraductal papillary adenocarcinoma of the pancreas)を経験し,報告した.患者は53歳の男性で,主訴は左季肋部痛である.人間ドックで血清アミラーゼ高値を指摘され,当院を受診した.超音波検査(US)で胆囊ポリープが検出され,内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)では膵管に異常を認めなかった.経過観察し,3回目のERCPおよび内視鏡的膵液細胞収集法(EPCC)で小膵癌と診断した.手術の結果,膵頭部主膵管に限局した10mmの膵管内乳頭腺癌があり,近接して,囊胞性病変が認められた.本症例は主膵管の拡張を伴わない非浸潤性主膵管内癌であり,膵癌の発生進展形式を検討するうえで貴重な症例と考え報告した.