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文献詳細

雑誌文献

胃と腸25巻5号

1990年05月発行

今月の主題 炎症性腸疾患の鑑別診断(1)―小腸・回盲部病変を中心に

主題

虚血性小腸炎15例の臨床像およびX線像の分析

著者: 飯田三雄1 岩下明徳2 松井敏幸1 富永雅也1 末兼浩史1 八尾隆史3 渕上忠彦4 坂本清人5 加来数馬6 八尾恒良7 藤島正敏1

所属機関: 1九州大学医学部第2内科 2福岡大学筑紫病院病理 3九州大学医学部第2病理 4松山赤十字病院消化器科 5公立学校共済組合九州中央病院内科 6福岡赤十字病院内科 7福岡大学筑紫病院内科

ページ範囲:P.523 - P.535

文献概要

要旨 虚血性小腸炎15例(狭窄型11例,一過性型4型)の臨床像およびX線所見を検討し,狭窄型10例についてはX線所見と切除標本病理所見とを比較検討した.高齢者(40~88歳,平均59歳),男女比11:4で,初発症状は腹痛,下血,下痢であった.12例は急性に発症したが,3例は比較的緩徐な発症を示した。病変は3~38cmの長さで回腸に好発することが多かったが,3例では100cm以上の病変を有していた.狭窄型のX線像は急性期(12~41病日)に母指圧痕像と皺襞浮腫像,治癒期(27病日以降)には管状狭窄,口側腸管の拡張,小潰瘍の多発を認めた.切除標本病理所見ではUl-Ⅱを主体とする全周性の区域性潰瘍から成っていた.X線上,管状狭窄部の辺縁には凹凸不整像を認めたが,切除標本病理所見との対比によって,これが粘膜の過形成,肉芽組織,炎症性ポリープあるいは再生粘膜によって生じた顆粒状変化と小裂溝を反映した所見と解釈できた,狭窄型虚血性大腸炎の特徴的X線所見である偏側性変形と囊形成は1例のみにしか認めなかった.一方,一過性型のX線像も,急性期(2~37病日)には母指圧痕像も皺襞浮腫像を認めるが,49病日以降になると小潰瘍(開放性~瘢痕)の出現あるいはX線像の正常化へと推移した.以上のX線所見より,本症の鑑別診断上,急性期には小腸アニサキス症,治癒期には腸結核,Crohn病などが重要であると考えた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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