今月の主題 炎症性腸疾患の鑑別診断(1)―小腸・回盲部病変を中心に
主題研究
アフタのみから成るCrohn病―8例の呈示とアフタの経過についての考察
著者:
八尾恒良1
瀬尾充2
岩下明徳3
竹中国昭1
杉山謙二1
有田正秀1
今村健三郎1
櫻井俊弘1
植木光彦1
松井敏幸1
前田和弘2
岡田光男2
所属機関:
1福岡大学筑紫病院内科・消化器科
2福岡大学医学部第1内科
3福岡大学筑紫病院病理
ページ範囲:P.571 - P.584
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要旨 1979年4月から1989年6月までに経験したアフタおよび小潰瘍(5mm以下)から成るCrohn病8例を呈示し,病変の性状,分布,生検所見,臨床経過につき考察を加えた.①色素散布法によって8例全例の胃と直腸に多発するアフタを認めた.十二指腸には8例中7例に病変を描出した.②小腸には6例,結腸には7例にアフタまたは小潰瘍を認めた.③胃から肛門までの消化管から採取された多数の生検標本を連続切片作製による方法も含めて検索し,6例に非乾酪性類上皮肉芽腫を,1例に肉芽腫様病変を証明した.④X線・内視鏡所見と生検所見から8例中7例をCrohn病確診例,残り1例をCrohn病疑診例とした.⑤6年3か月経過を追跡した1例では,偏側性硬化像と敷石像を有する病変へと進展した.しかし5年8か月の経過例では病変は消褪した.そのほか改善するもの,不変,再燃したものなどその経過は一定しなかった.上記の成績に文献的考察を加え,Crohn病のアフタは全消化管粘膜のマクロファージの異常を現しているものと推測した.そして比較的長期間存続し,何らかのきっかけで急速に縦走潰瘍や敷石像へと進展したり消褪するものと考えた.