今月の主題 小さな表面型(Ⅱ型)大腸上皮性腫瘍
主題
小さな表面型(Ⅱ型)大腸癌の組織学的特徴と肉眼形態の判定
著者:
大倉康男12
中村恭一1
所属機関:
1筑波大学基礎医学系病理
2東京都がん検診センター検査科病理
ページ範囲:P.829 - P.836
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要旨 大きさ10mm以下の表面型大腸癌64例について,その病理組織学的特徴を検討した.肉眼形態はⅡa型46例,Ⅱb型4例,Ⅱc型7例,Ⅱc+Ⅱa型7例である.Ⅱb型,Ⅱc型は大きさ5mm以下の微小癌に多く,Ⅱc+Ⅱa型はすべて大きさ6mm以上である.深達度別ではm癌47例(27%),sm癌17例(73%)であり,Ⅱc型,Ⅱc+Ⅱa型にsm癌の割合が多い.組織学的には腺腫部分の認められない高分化腺癌が大部分である.更に表面型大腸癌の肉眼形態が腸管壁の伸展具合により変化することを考察し,Ⅱa型とは腸管壁を十分に伸展させた状態で周囲粘膜よりわずかに隆起した表面平坦な病変であり,Ⅱc型とは肉眼的,組織学的に癌粘膜が陥凹している病変と定義した.またIs型との鑑別として,Ⅱa型は最大径に対して癌粘膜の高さが10%前後であり,その高さが3mmまでの病変とした.Ⅱc+Ⅱa型にはsm癌が多いが,深い陥凹面を有し,腸管壁を過伸展しても隆起の目立つ病変は粘膜下組織浸潤の著明な癌と推測された.小さな表面型大腸癌を集積することにより,近い将来大腸癌の組織発生ならびに発育・進展過程の問題は解決するはずである.そのためにも肉眼水準,組織水準における癌組織診断基準の新たな認識が必要である.