今月の主題 小さな表面型(Ⅱ型)大腸上皮性腫瘍
主題
小さな表面型大腸上皮性腫瘍の病理学的特徴―表面型(Ⅱa型)の判定基準を中心に
著者:
味岡洋一1
渡辺英伸1
千田匡1
本間照1
太田玉紀1
所属機関:
1新潟大学医学部第1病理
ページ範囲:P.837 - P.846
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要旨 従来当教室で用いてきた大腸上皮性腫瘍の肉眼型分類(旧分類)で,表面型(Flat型)と判定された病変の肉眼的特徴は“長径と高さの比≧3,かつ表面平坦(球形度≦1.2)”であり,その判定は,病変の“形”に注目して主観的に行われてきた.今回,客観的判定基準として,隆起性病変の中で3mm以下の高さのものをⅡa型と定義し,肉眼型の再分類(新分類)を行った,両肉眼型分類間で,表面型病変の出現頻度,担癌率を比較検討し,以下の結果が得られた.腺腫で,5mm以下で,旧分類のFlat型病変は22.4%,新分類Ⅱa型病変は91.3%を占めた.純粋癌では5mmより大10mm以下で,旧分類Flat型病変が58.8%,新分類Ila型病変が88.3%を占めた.5mm以下の病変の担癌率は,旧分類Flat型病変では,他の肉眼型と有意差はなく,新分類Ⅱa型病変ではI型病変より有意に低かった.5mmより大10mm以下では,旧分類Flat型病変はIp型より有意に高い担癌率を示し,Ⅱa型はⅠ型と有意差はなかった.肉眼型と担癌率との相関の点で,新旧分類の優劣はみられなかったものの,新分類では表面型の腺腫の初期形態,純粋癌の肉眼形態,の位置付けが明確となった.判定基準の客観性の観点からも,今後,大腸上皮性腫瘍の肉眼型分類を,高さの絶対値を基に行い,3mm以下の高さをⅡa型の判定基準とすることを提唱したい.