今月の主題 早期食道癌を問う
主題
病理からみた早期食道癌の定義と肉眼診断
著者:
渡辺英伸1
多田哲也1
岩渕三哉1
味岡洋一1
本山悌一1
所属機関:
1新潟大学医学部第1病理
ページ範囲:P.1075 - P.1086
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要旨 リンパ節の組織検索ができた食道の扁平上皮ep癌11例,mm癌8例,sm癌37例,とそれができなかった症例を加えた,ep癌88病巣,mm癌17病巣,sm癌48病巣を用いて,現行早期食道癌の定義の正否,否なら新しい定義とその肉眼診断および肉眼型分類をどのようにしたらよいかを検討した.n(+)はep癌,mm癌で0%,sm癌で30%であった.ly(+)はep癌で0%(病巣数でみても0%),mm癌で13%(同様に6%),sm癌で65%(同様に60%).v(+)はep癌で0%(病変数で0%),mm癌で13%(同様に6%),sm癌で68%(同様に63%)であった.患者5年生存率はep・mm癌で90~100%,sm癌で49~65%,再発率はep・mm癌0%,sm癌10%と言われている.したがって,早期食道癌は“リンパ節転移に関係なく,粘膜内癌”と定義されるべきである.肉眼形態も,m癌とsm癌の両者で異なっていた.肉眼型のうち,早期胃癌肉眼型に対応するⅠ型やⅢ型癌ないし部分的に,それらの型を有する癌はsm癌に属,Ⅱa型,Ⅱb型,Ⅱc型,Ⅱa+Ⅱb型,Ⅱc+Ⅱb型はほとんどが早期食道癌,ep癌,mm癌に属した.