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文献詳細

雑誌文献

胃と腸26巻1号

1991年01月発行

文献概要

今月の主題 早期胃癌―診断の基本と方法 主題 Ⅰ.診断の基本

肉眼所見との対比からみた内視鏡診断―特に慢性胃炎像と鑑別困難な早期胃癌について

著者: 渡辺七六1 吉田茂昭1 山口肇1 木庭郁朗1 斉藤大三1 横田敏弘1 小黒八七郎1 廣田映五2

所属機関: 1国立がんセンター内科 2国立がんセンター研究所病理

ページ範囲:P.39 - P.50

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要旨 慢性胃炎と鑑別困難な早期胃癌74例を対象として内視鏡所見とマクロ所見の比較検討を行った.内視鏡的に褪色を主体とする15例中9例(60%)はマクロ上,陥凹像に一致した.発赤を主体とする40例では陥凹像(19例:48%)以外に隆起,胃小区の腫大像など多彩なマクロ像と対応した.凹凸像を主体とする19病変では内視鏡的にみられた領域性が切除標本では不明瞭となり,約半数が孤立性の小陥凹像として認められた.新鮮マクロと固定マクロの対応性は76%の症例で良好であったが,新鮮標本で異常所見を指摘できなかったものが16例あり,うち9例は固定標本で凹凸の異常が明らかとなった.これら9例は他の7例に比して分化型腺癌優位であり,Ⅱbを伴う頻度は少なかった.対象74例の領域診断成績は極めて不十分であり,一般に実際よりも小さく読む傾向が認められた.長径1cm以上の48例について,術後の構築図に基づいて浸潤境界部の内視鏡所見を見直すと,色調の異常を主体とするものでは褪色像が,凹凸の異常を示すものでは発赤像が最も高率に認められた(各59%,67%).色素撒布法を施行した63例について撒布前後の内視鏡所見および切除標本のマクロ所見を比較検討したが,質的診断,領域診断ともに本法の有用性は明らかであった.質的診断の有用性は発赤像,凹凸像の強調によって得られ,領域診断では発赤,陥凹像に加え褪色像が有用な診断指標となった.慢性胃炎像と鑑別困難な早期胃癌の診断学はまだまだ不完全であるが,存在診断における発赤や凹凸像,領域診断における褪色像の意義とその有用性などについては,今回の検討によって1つの手掛かりが得られたように思われた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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