文献詳細
文献概要
早期胃癌研究会
1990年11月の例会から
著者: 神津照雄1 武内俊彦2
所属機関: 1千葉大学第2外科 2名古屋市立大学第1内科
ページ範囲:P.79 - P.80
文献購入ページに移動食道X線写真は八巻(虎の門病院放射線診断科)が読影した.Eiの隆起性病変で立ち上がりがなだらかで,表面が平滑で潰瘍形成がみられず,粘膜下腫瘍様の悪性腫瘍すなわち既往歴にある乳癌の食道移転あるいは低分化・未分化の食道癌と診断した.内視鏡は長野(仙台市医療センター内科)が易出血性,隆起の立ち上がりに血管透見が見られる点から粘膜下発育型の悪性腫瘍であり,乳癌の転移,basaloidまたはadenocysticな特殊な食道癌と診断した.病理は下川(岐阜大病理)が説明した.切除標本はX線,内視鏡検査の1か月後のものであり,表面に潰瘍形成がみられ,術前診断時とは様相が異なっていた(Fig. 1).上皮下,固有筋層,外膜に浸潤する腺扁平上皮癌であり,腺癌の部分は肛門側に,扁平上皮癌は口側に主にみられたと説明した.岩下(福岡大筑紫病院病理)は扁平上皮癌の中にはpseudogrand構造を持つものが10%ぐらいあると文献的にも報告されており,この症例は扁平上皮癌の診断でもよいとの見解が出された.吉田(都立駒込病院外科)は本例は腺扁平上皮癌としては粘膜下発育の顕著な症例であり,比較的めずらしいとコメントを述べた.出題者の意図もその点にあった症例であった.
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