胃癌組織型分類とX線・内視鏡所見
著者:
馬場保昌
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清水宏
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武本憲重
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加来幸生
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冨松久信
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池田和隆
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秋浜玄
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浦本幸彦
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上村晋一
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竹腰隆男
,
丸山雅一
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藤井彰
,
西満正
,
中島聰總
,
加藤洋
,
柳沢昭夫
ページ範囲:P.1109 - P.1124
要旨 1987年から1989年に癌研外科にて切除された早期胃癌症例を対象に癌組織型分類と肉眼型(対象434病変),X線・内視鏡所見(対象65病変)の関係について検討を行い,癌組織型分類の意義について考察した.癌組織型分類は胃癌取扱い規約に従って分類し,更にそれらを分化型(pap,tub1,tub2)と未分化型(por,sig)に2分類した.(1) 癌組織型を分化型と未分化型に2分類したほうが肉眼型との関係を簡潔に把握できることがわかった.すなわち,a)未分化型癌のほとんどは陥凹型である.b)分化型癌でも陥凹型が多く,未分化型癌に比べると隆起型の頻度が高いという傾向が認められた.これは,癌粘膜そのものが陥凹を形成しやすいことを表しており,未分化型癌にその傾向が強いということが考えられた.(2) 隆起型のほとんどは分化型で,平盤状隆起が多く,表面は大小不同の顆粒状で輪郭は不規則である.色調は発赤調のものから褪色調のものまである.しかし,組織型を更にpap,tub1,tub2に分類しても,各組織型間にX線・内視鏡所見の差は認められなかった.陥凹型では分化型と未分化型の間には明らかなX線・内視鏡所見の差が認められたが,分化型のpapまたはtub1とtub2の間に所見の差はなく,未分化型のporとsigの間にも所見の差は認められなかった.分化型と未分化型の陥凹型早期癌のX線ならびに内視鏡所見の特徴は,未分化型では陥凹境界が明瞭で断崖状を呈し,陥凹内に大小不同の顆粒が認められ,粘膜ひだの急なヤセや中断が認められる.内視鏡的には褪色中に散在する発赤斑として認められる.分化型では陥凹面は凹凸の変化に乏しく,陥凹境界は微細な棘状を呈し,粘膜ひだの急なヤセや中断は少なく,辺縁隆起を伴うものが多い.以上のように,2分類法に基づくX線・内視鏡所見の差を理解することによって,早期胃癌診断にあたっての所見の分析や整理が容易となり,良・悪性判定や浸潤範囲,更には深達度診断にあたっての指標を求めやすくなると思われた.