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雑誌目次

雑誌文献

胃と腸26巻10号

1991年10月発行

雑誌目次

今月の主題 胃癌の組織型分類とその臨床的意義 序説

臨床における胃癌の組織型分類の不要論に答えて

著者: 白壁彦夫

ページ範囲:P.1097 - P.1101

 歌集や句集は,ボロボロになるまで読む.まず,受け止め,そして味わいながら,心に響くものに同調する.さて,胃癌の組織型分類とは,どんなものであろうか.

 胃癌の取扱い規約(金原出版)は,いつも机上におき,指針となってきたものである.このとおりに胃癌を考え,共通の用語集として使ってきた.ただの規約なのである.初版(手許にないので西満正癌研病院長のご好意で拝借した)から,この機におさらいしたが,いま,新しい組織型分類が討議されている.

主題

なぜ,胃癌の組織型分類は必要か―組織分類の概観,問題点,新しい提案

著者: 喜納勇

ページ範囲:P.1103 - P.1108

要旨 胃癌の組織型分類には二大分類法(major classification)と細分類法(detailed classification)がある.前者は疫学など多数の症例による研究に適しており,後者は個々の組織診断に適している.現行の胃癌研究会の分類は後者に属するが,typingとgradingを併用し,実際的であるため本邦では広く使用されている.特に低分化腺癌(por)の項目の存在は,WHOの組織分類にみられないだけ,貴重なものである.今回,胃癌研究会組織分類検討委員会はporをsolid type(por1)とnon solid type(por2)とに亜分類することを提案した.いわゆる髄様癌とスキルスとは肉眼形態も,生物学的態度も異なるからである.この提案の理由と,solidなる用語を適用するに至った経緯を解説した.

胃癌組織型分類とX線・内視鏡所見

著者: 馬場保昌 ,   清水宏 ,   武本憲重 ,   加来幸生 ,   冨松久信 ,   池田和隆 ,   秋浜玄 ,   浦本幸彦 ,   上村晋一 ,   竹腰隆男 ,   丸山雅一 ,   藤井彰 ,   西満正 ,   中島聰總 ,   加藤洋 ,   柳沢昭夫

ページ範囲:P.1109 - P.1124

要旨 1987年から1989年に癌研外科にて切除された早期胃癌症例を対象に癌組織型分類と肉眼型(対象434病変),X線・内視鏡所見(対象65病変)の関係について検討を行い,癌組織型分類の意義について考察した.癌組織型分類は胃癌取扱い規約に従って分類し,更にそれらを分化型(pap,tub1,tub2)と未分化型(por,sig)に2分類した.(1) 癌組織型を分化型と未分化型に2分類したほうが肉眼型との関係を簡潔に把握できることがわかった.すなわち,a)未分化型癌のほとんどは陥凹型である.b)分化型癌でも陥凹型が多く,未分化型癌に比べると隆起型の頻度が高いという傾向が認められた.これは,癌粘膜そのものが陥凹を形成しやすいことを表しており,未分化型癌にその傾向が強いということが考えられた.(2) 隆起型のほとんどは分化型で,平盤状隆起が多く,表面は大小不同の顆粒状で輪郭は不規則である.色調は発赤調のものから褪色調のものまである.しかし,組織型を更にpap,tub1,tub2に分類しても,各組織型間にX線・内視鏡所見の差は認められなかった.陥凹型では分化型と未分化型の間には明らかなX線・内視鏡所見の差が認められたが,分化型のpapまたはtub1とtub2の間に所見の差はなく,未分化型のporとsigの間にも所見の差は認められなかった.分化型と未分化型の陥凹型早期癌のX線ならびに内視鏡所見の特徴は,未分化型では陥凹境界が明瞭で断崖状を呈し,陥凹内に大小不同の顆粒が認められ,粘膜ひだの急なヤセや中断が認められる.内視鏡的には褪色中に散在する発赤斑として認められる.分化型では陥凹面は凹凸の変化に乏しく,陥凹境界は微細な棘状を呈し,粘膜ひだの急なヤセや中断は少なく,辺縁隆起を伴うものが多い.以上のように,2分類法に基づくX線・内視鏡所見の差を理解することによって,早期胃癌診断にあたっての所見の分析や整理が容易となり,良・悪性判定や浸潤範囲,更には深達度診断にあたっての指標を求めやすくなると思われた.

胃癌の組織型と胃壁内進展形式

著者: 下田忠和 ,   藤崎順子 ,   樫村弘隆 ,   池上雅博 ,   石井高暁 ,   松井隆明 ,   江頭由太郎 ,   牛込新一郎

ページ範囲:P.1125 - P.1134

要旨 胃癌の粘膜内と深部浸潤巣の組織型の変化と,粘膜内組織型と胃壁内浸潤増殖形式の検討を行った.粘膜内が分化型腺癌を示したものは,その浸潤巣で早期癌では144/208例が,進行癌では51/108例が低分化腺癌をはじめとして他の組織型に変化していた.これに対し粘膜内が低分化腺癌では,ほとんどその相違がみられなかったが,印環細胞癌はそのほとんどが低分化腺癌に変化していた.また浸潤部で低分化充実癌を示したものは,粘膜内が分化型腺癌に多くみられた.またこの中には予後の異なる髄様性リンパ球浸潤癌,あるいは内分泌細胞癌が少なからず含まれていた.更に粘膜内の分化型腺癌は胃型と腸型に分けられ,充実癌は腸型に,非充実癌は胃型に多かった.

胃癌の肉眼形態と組織型

著者: 滝澤登一郎 ,   岩崎善毅 ,   飯野弥 ,   加藤奨一 ,   前田義治 ,   川口研二 ,   深山正久 ,   船田信顕 ,   小池盛雄

ページ範囲:P.1135 - P.1148

要旨 外科的に切除された988症例,1,219病変の胃癌を概観し,肉眼形態と組織型の問題について次のような観察結果を得た.①粘膜内癌の約76%は高分化単純型癌である.①早期癌が進行癌に成長する過程で単純型癌は高分化型と低分化型の頻度が逆転し,低分化型が優位となる.同時に複合型の頻度も増大する.①早期胃癌で肉眼型と組織型の関係を検討すると,潰瘍合併型に特徴がある.高分化型では潰瘍の合併に伴ってsm浸潤の確率が高くなるが低分化型癌では潰瘍合併とsm浸潤の相関性は認められない.①進行癌の肉眼型でBorr mann 5型の占める割合が高い.pm癌の半数以上が5型に分類される.以上の結果を考察し,粘膜内に高分化型癌として発生した胃癌も,進行癌へ成長する過程で,低分化型癌に変貌しうる可能性が示唆された.

胃癌の組織型と予後

著者: 廣田映五 ,   落合淳志 ,   尾田恭 ,   板橋正幸 ,   中村圭子 ,   木下平 ,   笹子三津留 ,   丸山圭一 ,   平田克治

ページ範囲:P.1149 - P.1158

要旨 胃癌の組織型と予後の関連を明らかにするため,6,288例を対象としてリンパ節転移率,累積生存率などを対比検討した.リンパ節転移率は組織型別にみると,深達度sm,pm,ssでpap,porでは比較的高い傾向を示した.術後生存率は,深達度smの5年で86.6%,10年で75.8%であったが,sigでは良好,papで77.3%,61.4%と最も不良の傾向を示した.pmでは5年で80.9%,10年で69.5%であり,sigでは良好であったが,papでは70.2%,61.2%と最も不良であった.ssでは5年で61.1%,10年で50.7%,であって,papでは47.2%,32.6%と最も不良であった.深達度s(+)以降に進行した群では5年で32.0%,10年で16.0%と不良で,組織型別で差がない.つまり,深達度別組織型予後は深達度mやs(+)以降群では差がないが,sm,pm,ssでは,深達度が浅いと印環細胞癌の予後は比較的良好,分化型管状腺癌は中間的,低分化腺癌は予後不良,更に乳頭状腺癌では予後不良であった.

胃のリンパ球浸潤性髄様癌(medullary carcinoma with lymphoid stroma)の臨床病理学的検索

著者: 岩下明徳 ,   植山敏彦 ,   山田豊 ,   有田正秀 ,   恒吉正澄 ,   渡辺英伸

ページ範囲:P.1159 - P.1166

要旨 胃リンパ球浸潤性髄様癌の77例78病変について,臨床病理学的立場から検討した.本腫瘍の実質は基本的には低分化型腺癌であるが,78病変中67病変では少なくとも一部,特に粘膜に分化型腺癌を伴っていた.サルコイド様反応(類上皮細胞性肉芽腫)は13病変の腫瘍間質に観察された.本腫瘍の5年生存率(sm癌83%,pm癌100%,ss癌72%)は非リンパ球浸潤性髄様癌のそれ(sm癌59%,pm癌38%,ss癌27%)に比べ良好であり,進行癌では有意差がみられた.以上の結果から,本腫瘍は特徴ある組織像を呈し,予後良好の腫瘍であることが再確認された.そして,著明なリンパ球浸潤に加え類上皮細胞性肉芽腫の出現は本腫瘍の間質反応が宿主反応である可能性が高いことを示唆していると思われた.

主題研究

胃低分化腺癌(por)の亜分類の臨床病理学的研究

著者: 甲田賢治 ,   喜納勇

ページ範囲:P.1167 - P.1172

要旨 胃癌取扱い規約の低分化腺癌(por)にはいくつかの異なる組織型がみられる.そこで低分化腺癌を形態学的に整理するために充実型と非充実型に亜分類し,臨床病理学的に検討した.その結果,充実型は平均年齢が非充実型より高く,男性に多く,一方,非充実型は男女ほぼ同数であった.また,術後の予後は充実型が良好であった.更に,c-erbB-2遺伝子産物の陽性率は低分化腺癌は高分化腺癌より低く,充実型のみに陽性例が認められた.以上より,組織形態ならびに臨床病理学的に低分化腺癌を充実型と非充実型に亜分類することが可能と考える.

症例

横行結腸にみられた不完全型Peutz-Jeghers症候群の1例

著者: 山中賢治 ,   世古口務 ,   宮原成樹 ,   中濱貴行 ,   岩佐真 ,   勝峰康夫 ,   稲守重治 ,   小林和夫 ,   野田雅俊 ,   大西武司

ページ範囲:P.1173 - P.1176

要旨 患者は52歳,女性で,腹痛を主訴に受診.家族歴に特記すべきことはなし.皮膚,口唇,口腔粘膜に色素沈着を認めなかった.注腸透視,大腸内視鏡および腹部CTで横行結腸に直径4cm大の山田Ⅳ型ポリープを認め,横行結腸部分切除を施行した.組織学的にはPeutz-Jeghers型の過誤腫であったが,家族歴と,色素沈着を伴わないことから不完全型Peutz-Jeghers症候群と診断された.本症の特徴は,比較的高齢にみられ,ポリープは単発であることが多いことであった.また,Peutz-Jeghers症候群の代表的な家系からその初発患者の特徴を推測するに,本症の特徴と非常に類似していた.

十二指腸下行部に多発した陥凹型m癌の1例

著者: 多幾山渉 ,   船越真人 ,   高嶋成光 ,   平林靖士 ,   万代光一 ,   小堀迪夫 ,   斉藤あゆみ

ページ範囲:P.1177 - P.1180

要旨 十二指腸下行部に多発する陥凹型早期癌を経験したので報告する.患者は65歳,男性.めまいのため人間ドックを希望し,上部消化管内視鏡検査にて,十二指腸下行部に陥凹性病変を1個発見された.精検にて十二指腸下行部の副乳頭と乳頭間の前壁と,乳頭の約3cm肛門側の前壁の2か所に陥凹性病変を認め,生検にて高分化型管状腺癌と診断された.術中内視鏡にて2病変の位置を確認し,それぞれ紡錘状に部分切除した.切除標本は2病変とも浅い陥凹性病変で,組織所見は粘膜内に限局した高分化型管状腺癌であった.本例は極めてまれであると共に,上部消化管内視鏡検査時の十二指腸観察の必要性を示唆している.

成人にみられた上行結腸重複腸管の1例

著者: 石川博文 ,   金泉年郁 ,   松為泰介 ,   清水良祐 ,   中野博重 ,   稲次直樹 ,   桜井隆久

ページ範囲:P.1181 - P.1185

要旨 下痢を契機に発見された64歳男性の上行結腸消化管重複症について報告した.本症例の上行結腸後壁の半球形の腫瘤は注腸像および内視鏡像からは粘膜下腫瘍であり,CT像での内部の均一性から囊胞性病変が示唆され,上行結腸部分切除を含む回盲部切除術を施行した.摘出標本の割面像で腫瘤は大きさ5.5×4×3cm,内部にゼラチン様物質を含んだ壁の厚さ3mmの囊胞性病変であった.病理組織学的に囊胞性病変の内面は結腸型粘膜で覆われており,正常の管腔と固有筋層を共有していることから消化管重複症と診断された.本症例は回盲部付近に発生した囊腫状消化管重複症で,Kottra & Dottsの分類で典型的なtype Ⅰaに相当した.

異物による胃粘膜下炎症性腫瘤の1例

著者: 藤沢和明 ,   岩下明徳 ,   平野豊 ,   遠城寺宗近 ,   丸岡彰 ,   奈須俊史

ページ範囲:P.1187 - P.1192

要旨 患者は78歳,女性.主訴は心窩部痛.胃内視鏡検査で,前庭部に急性胃粘膜病変を認め,同時に,傍幽門後壁と体下部小彎後壁に,小さな粘膜下腫瘍(SMT)様所見を認めた.経過観察中に,このSMT様隆起が急速に著明に増大し,表面にびらんと潰瘍を形成した.初診より約10か月後に,胃部分切除術を施行した.切除標本では,前庭部から胃角の後壁に,3×7cmの弾性硬の腫瘤を認めた.割面では,固有筋層から漿膜下組織にかけて膿瘍を認め,中央部に異物が存在した.この異物は,1本の爪楊枝と判明した.誤嚥した爪楊枝が胃壁内に侵入し,それが原因となり,炎症性腫瘤を形成した極めてまれな1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.

研究

組織形態計測に基づく大腸絨毛状腫瘍の異型度の評価と良性悪性判別

著者: 伴慎一 ,   中村恭一 ,   大倉康男 ,   石堂達也 ,   斉藤澄

ページ範囲:P.1193 - P.1199

要旨 大腸絨毛状腫瘍の良性悪性を客観的に振り分けるために,それを対象として,2つの異型度係数(ING,ISA)とそれから導かれる判別式について検討を行った.絨毛状腫瘍のING平均値は良性腺管腺腫のそれに近く,ISA平均値は管状腺癌のそれよりも高かった.それらの分布をISA-ING相関図上でみると,良性腺管腺腫と管状腺癌の分布域の間の領域を中心に分布していた.また,それらは良性腺管腺腫・管状腺癌の計測値から得られた二変量線形判別関数Fによりその約70%が悪性に判別された.これらのことから,絨毛状腫瘍の組織構造は悪性としての構造異型の1つであると考えられる.明らかな悪性絨毛状腫瘍の計測値と管状腺癌のそれとの間に差があることから,異型度係数の重みづけを変えずに両者の平均値の差だけFを平行移動して,それを絨毛状腫瘍の新しい良性悪性組織診断基準とすると,絨毛状腫瘍の計測値の95%は悪性に判別された.

今月の症例

胃体上部前壁早期類似進行癌と噴門部早期癌の重複癌

著者: 小田代一昭 ,   美園俊明 ,   西俣寛人 ,   山下正策 ,   瀬戸山史郎

ページ範囲:P.1094 - P.1096

〔患者〕72歳,男性.主訴:上腹部不快感.現病歴:1か月前より上腹部に不快感を覚え,近医でのX線と内視鏡検査で胃体上部のⅡcと診断され,精査目的で当院を紹介された.

〔X線所見〕半立位腹臥位第1斜位像(Fig. 1a).噴門部後壁の小さな不整形のニッシェとその周囲を囲む微細な顆粒状陰影が描写されている(Ⅱcと診断).また胃体上部前壁に比較的境界明瞭な淡いバリウム斑の中に大小不同の顆粒状陰影と微細なバリウム斑が認められる(Ⅱc類似進行癌と診断).

初心者講座 胃X線検査のポイント―私の精密検査法

9.隆起型早期癌

著者: 七海暁男

ページ範囲:P.1202 - P.1203

 1.精密検査の目的

 精密検査は,病変の確認,存在部位の確定,形状診断,性状診断,浸潤範囲,深達度,最後に併存病変の発見を目的として行っている.

 2.精密検査の方法

 焦点が0.8mm(公称)の管球を備えているOvertabletube typeのX線撮影装置を使用している.

9.隆起型早期癌

著者: 後藤裕夫

ページ範囲:P.1204 - P.1205

 はじめに

 隆起性病変の診断に重要な事項は,隆起の起始部の性状,隆起の大きさ,形,高さ,表面の性状であろう.これらをいかに描出するかが隆起型早期癌の精密検査法のポイントとなり,その描出のために圧迫法,二重造影法を主体として検査を行っている.

 1.圧迫法

 検査を始めるにあたり,圧迫を主体として描出を試みるか,二重造影を主にして描出するかを予め決めておく.ルーチンの写真を参考にし,胃角近傍の小彎,大彎など二重造影では正面視の困難な部位では圧迫を主にした検査を行うようにする.

9.隆起型早期癌

著者: 横山善文

ページ範囲:P.1206 - P.1207

 隆起型早期癌はⅠ型,Ⅱa型に分類され,早期癌の中での頻度はそれぞれ10%前後である.組織学的にそのほとんどは分化型腺癌で,腸上皮化生粘膜から発生することよりA領域(幽門前庭部)に好発するとされている.Ⅰ型とⅡa型の区別に関する規定は胃癌取扱い規約にもないが,一般的に肉眼的な高さが5mm以下のものがⅡa型として扱われている.また,大きい平盤状隆起はⅡa集簇型と呼ばれることがある.以上が隆起型早期癌に関する基本事項であるが,X線的に鑑別診断上問題になるのは,Ⅰ型早期癌では過形成性ポリープ,Ⅱa型では異型上皮であろう.大きさが2cmを越えると癌の頻度が高くなると言われるが,大きさだけではなく隆起の輪郭・高さ,表面の性状,陥凹・茎の有無がX線診断の指標になり,二重造影,圧迫法を駆使してこれらを描出するが,診断に苦慮する例も少なくない.

早期胃癌研究会

1991年7月の例会から

著者: 神津照雄 ,   長廻紘

ページ範囲:P.1200 - P.1201

 1991年7月度例会は,蒸し暑い最中の7月17日,エーザイ本社ホールで聴衆満席のもと開催された.

〔第1例〕 60歳,男性.Ⅱc型表在食道癌(症例提供:岐阜大学放射線科 鈴木).

胃と腸ノート

夫婦揃って小胃癌

著者: 新海眞行

ページ範囲:P.1208 - P.1208

 胃診断学の進歩は著しく,発見される小胃癌の数は増加している.今回,全くの偶然ではあるが,夫婦揃って小胃癌という極めてまれな症例を経験したので報告する.

〔症例1〕60歳,男性.主訴1空腹時心窩部痛.

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欧文目次

ページ範囲:P.1093 - P.1093

書評「うまい英語で医学論文を書くコツ―A guide to comfortable English」

著者: 宮坂昌之

ページ範囲:P.1102 - P.1102

 日本の教育レベルが世界の中でも一流であることに異存を唱える人は少ないであろう.私は海外生活が長かったことから,自分の子どもたちを海外と日本の両方の学校にやった経験をもち,日本の教育レベルが極めて高いことに大いに賛意を示すものである.しかし,こと,英語教育になると話は別である.英語が読めるが,話せない,そして書けない日本人が作りだしてきた日本の英語教育は,私が学生のときによく用いた言葉を使えば,「犯罪的」でさえある.教科書や辞書には英語では決してみられないような不自然な表現が並び,英語の授業では文法と読解の仕方しか教えない.英語の先生方が「生きた英語」をあまりご存じないので,“in an hour”を「イン・アン・アワー」,“an apple”を「アン・アップル」と教えてしまう.カタカナ風でも「イナナワ」,「アナプル」のほうがはるかに通じるのに.なにしろ話し方をほとんど習わないものだから外国人とのお付合いが苦手ということになる.何を聞いてよいかわからず,「何歳ですか? 子どもは何人いますか? 結婚していますか?」などとプライベートなことばかり聞き,気まずいことになったり,「よろしく」とか,「お世話になります」などの日本的な表現を逐語訳しようとしたりして考え込んでしまう.

 書くことになるとなおさらである.私自身,大学院を外国でやり,博士論文を英語で書くときに,原稿を何度も何度も赤ペンで隙間がないほど直され,ショックを受けた経験がある.自分ではそこそこ話せると思っていたが,さっぱり書けないのである.そこでわかったのは,まず,不正確な話し方しかしていなかったので,きちんと書くことが難しかったということと,いわゆるコツを習っていなかったためにルールを無視して,文法はあっていたとしても不自然な文章を書いていたことである.

書評「標準外科学 第6版」

著者: 川田志明

ページ範囲:P.1124 - P.1124

 永く外科学教科書あるいは副読本として推薦してきStandard Textbook「標準外科学」の第6版が,内容・装丁も新たに上梓された.医学生に本書を薦めてきた経緯は,編集者の序言のとおりに“外科学のminimum requirementを充足し,compactでhandyな教科書”であったことであり,この初版以来の理念が全体に貫かれているからにほかならない.

 内容については,臓器移植や救急医学などの外科学の進歩が網羅されている一方で,「医師国家試験出題基準」を満たし,各臓器の「癌取扱い規約」を掲げるなど,up-to-dateなものとなるよう配慮されている.外科学を修めようとする医学生,研修医には恰好の伴侶となろうし,項目・内容が整っていることから,指導者にとっても講義・実習などの立案に役立つものと期待される.

書評「現代日本医療の実証分析―続・医療経済学」

著者: 江見康一

ページ範囲:P.1148 - P.1148

 本書は,二木氏が1985年に刊行した「医療経済学」の続編であり,前著の問題視角をいっそう拡充・深化した分析を展開し,現在医療経済が遭遇する基本問題の実証的解明と,その解決への処方箋を示したものといえる.

 二木氏の著書の特徴は,第1に臨床医の眼で医療の経済的側面を捉え,そのことが論証の強味となっていること,第2に章立てがつねに問題提起の形をとり,鋭い切り口で端的に核心に迫り,行政当局の公式見解にも敢えて異を唱える気概と統計的実証に意欲的に取り組んでいることである.

書評「うまい英語で医学論文を書くコツ―A guide to comfortable English」

著者: 日野原重明

ページ範囲:P.1172 - P.1172

 「うまい英語で医学論文を書くコツ」という,英文論文の書き方のコツを示した本が,植村研一教授により出版された.

 私は,LSKing著の「なぜ明快に書けないのか」(メディカル・サイエンス・インターナショナル,1981年)という,米国医師会ジャーナル(JAMA)の元名編集長の著書を監訳したことがあるので,英語での文章作りには非常に興味をもっていた.これは主に英語で語学専門職の間で広く読まれた本であるが,植村先生の本は,日本人はどこが間違いやすいかということを十分承知のうえで,日本人向きに書かれてあるので非常に役に立つ.

編集後記

著者: 中村恭一

ページ範囲:P.1210 - P.1210

 ある事物に対してそれを幾つかの類に分けることは,あらゆる分野でなされている.ただ,分類は相手に伝えるための共通言語としての役割のみであってはならない.幾つかの類に分けることの目的ということを考えてみると,そう分類することによって,①何らかの意義が実際において見出される,②その分類には意義のある新たなる主張の生まれ出ずる可能性を秘めている,ということであろう.分類の対象が胃癌組織型である場合もそのようであらねばならない.このような観点から本号主題「胃癌の組織型分類とその臨床的意義」の力作論文を読ませていただいた.

基本情報

胃と腸

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1219

印刷版ISSN 0536-2180

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