症例
噴門部の微小な衝突癌の1例―低分化型扁平上皮癌smと腺管腺癌m
著者:
安藤貴文1
岡勇二1
黒川晋1
日下部篤彦1
早川誠1
田原裕文1
桑原由孝1
舘野文美雄1
佐藤嘉晃1
酒井徹1
服部龍夫2
平尾哲夫2
宇野裕3
森瀬公友4
楠神和男4
所属機関:
1名古屋第一赤十字病院消化器内科
2名古屋第一赤十字病院消化器外科
3名古屋第一赤十字病院消化器検査部病理
4名古屋大学医学部第1内科
ページ範囲:P.313 - P.319
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要旨 患者は52歳の男性で,上部消化管X線検査および内視鏡検査により滑脱型食道裂孔ヘルニアが発見され,そのヘルニア内にⅡc+Ⅱaおよびその後壁側に小さなⅡcを認め,内視鏡下生検により,それぞれ扁平上皮癌と腺管腺癌と診断された.手術標本の病理組織学的検索では,粘膜下層まで浸潤した低分化型扁平上皮癌(19×15mm)の辺縁帯に接して,粘膜層内にとどまる腺管腺癌(9×6mm)があった.更に精査したところ組織学的に両者が衝突している部位が確認された.衝突部位では粘膜表層の一部に腺管腺癌が存在し,粘膜深層から粘膜下層まで低分化型扁平上皮癌が浸潤し,両者の間に形態的移行像は認められなかった.以上の所見から噴門部における衝突癌と診断した.