症例
虚血性小腸炎(狭窄型)の1例
著者:
深水良1
久原敏夫1
土橋清高1
井上純一2
辻秀雄2
原口正道2
所属機関:
1国立療養所武雄病院外科
2国立療養所武雄病院内科
ページ範囲:P.449 - P.454
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要旨 患者は49歳,男性.何ら誘因なく右下腹部痛にて発症して入院,数日後に下血と腸閉塞を認め,Denis-tubeを挿入した.全身状態が安定した後,チューブよりの二重造影を第6,9,21,40病日にそれぞれ施行した.第6,第9病日の造影では回腸末端より約50cm口側の回腸に約30cmに及ぶ狭窄と母指圧痕像,縦走潰瘍が認められた.第21病日の造影では更に深い縦走潰瘍が認められた.第28病日に施行された上腸間膜動脈造影では異常は見出しえなかった.第40病日の造影では病変部は短縮し,管状狭窄を呈していた.第58病日に開腹手術を施行した.病変部は発赤した膜様物で覆われ,右側腹部に固く癒着しており,病変部を中心に約30cm剝離切除した.切除標本は長さ4cmの全周性の狭窄を呈し,壁の肥厚が認められた.鏡検ではUⅠ-Ⅲの潰瘍と著明なfibrosis,局所にヘモジデリンを貪食した担鉄細胞,また再疎通を伴った器質化した血栓の認められる細静脈も散見された.以上の結果より,この症例は虚血性小腸炎(狭窄型)と診断された.