今月の主題 大腸sm癌の診断
主題
大腸sm癌の病理―特にsm浸潤度と肉眼像の解析
著者:
池上雅博1
下田忠和1
渡二郎2
梁承茂2
石井高暁1
小井戸薫雄1
松井隆明1
牛込新一郎1
所属機関:
1東京慈恵会医科大学病理
2早期胃がん検診協会中央診療所
ページ範囲:P.776 - P.786
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要旨 大腸sm癌144病変をその割面形態から,粘膜内隆起性増殖を伴うPG癌(cancer wlth polypoid growth)と伴わないNPG癌(cancer with non-polypoid growth)に分類し,表面型大腸sm癌の肉眼診断について検討した.なお,表面型の定義は病変の絶対的高さが3mm以下のものとした.PG-sm癌99病変68.8%,NPG-sm癌45病変31.3%であった.各種計測の結果,PG癌,NPG癌のsm浸潤面積に差はみられなかったが,NPG癌11.Omm,PG癌21.Ommと,NPG癌の平均最大径はPG癌に比して有意に小さい病変であった.すなわち,NPG癌はその大きさに比してsm浸潤面積が大きいことが特徴であった.肉眼分類では,PG-sm癌は表面型(IIa)が3例しか認められない.一方,NPG-sm癌は,その44.4%が表面型であり,NPG癌を主体とし検索を行った.NPG陥凹型m癌,sm癌の比較から,sm浸潤度と最もよく相関する指標は,病変の絶対的高さであった.高さ1mm以下では,m癌,sm微小浸潤癌,1mmを越える例では,sm中等度以上浸潤癌,3mm以上はsm高度浸潤癌と考えられた.病変最大径では,10mmを越えるものはほとんどがsm高度浸潤であったが,10mm以下の病変にも多数(50%以上)の中~高度浸潤例が存在した.陥凹の形成はsm浸潤の指標として重要であったが,その深さの値はsm浸潤量を直接反映するものではなかった.1mm以上の深さならsm高度浸潤が考えられたが,1mm未満のものにも,sm中~高度浸潤例が多数みられた.また,割面形態より,sm浸潤度の組織学的判定基準をある程度客観的に示し,中等度以上浸潤例では脈管侵襲がみられることから,中等度以上浸潤例を確実に診断することの重要性について述べた.