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文献詳細

雑誌文献

胃と腸26巻9号

1991年09月発行

今月の主題 Ⅲ型早期胃癌の診断に迫る―潰瘍の良・悪性の鑑別

主題症例

線状潰瘍瘢痕を伴う胃潰瘍の辺縁に限局した小胃癌の1例

著者: 吉田行哉1 田中達朗1 橋本光代1 星原芳雄1 早川和雄1 福地創太郎1 七海暁男2 海上雅光3

所属機関: 1虎の門病院消化器科 2虎の門病院放射線診断学科 3虎の門病院病理学科

ページ範囲:P.1034 - P.1038

文献概要

要旨 患者は53歳女性.1978年から胃潰瘍の再発を繰り返す.1990年9月心窩部痛,吐・下血が出現.胃X線検査で巨大潰瘍を指摘され当院を受診,内視鏡検査で胃角部の小彎を中心とした長い線状潰瘍瘢痕の前壁側端に,長径30mm強の楕円形の潰瘍を認めた.潰瘍の辺縁はほとんど全周で平滑であるが,潰瘍の肛側辺縁に浅い陥凹のはみ出し様の所見があり,この外縁からの生検組織に癌を認めた.内視鏡所見を見直すと,この陥凹の肛側に接して長径5mm弱の褪色域が描出されていた.約2か月後の内視鏡検査では,潰瘍は縮小しているが褪色域は拡大しており,明瞭なⅡcを形成していた.切除標本では陥凹のはみ出しに癌はなく再生上皮で覆われ,この外側に長径8mmのⅡbを示す粘膜内に限局した管状腺癌が認められた.潰瘍の治癒機転により潰瘍の辺縁に再生膜が伸び,潰瘍の辺縁は癌から離れるに至ったと推測される.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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