症例
粘膜下腫瘍様の発育を呈したS状結腸癌の1例
著者:
安藤貴文1
岡勇二1
黒川晋1
日下部篤彦1
早川誠1
桑原由孝1
田原裕文1
舘野文美雄1
佐藤嘉晃1
酒井徹1
丸井麗子1
石黒恭子1
服部龍夫2
石川覚也2
宇野裕3
平林紀男3
森瀬公友4
楠神和男4
所属機関:
1名古屋第一赤十字病院内科
2名古屋第一赤十字病院外科
3名古屋第一赤十字病院検査部病理
4名古屋大学医学部第1内科
ページ範囲:P.349 - P.354
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要旨 患者は44歳,男性.下痢および体重減少を主訴として来院.注腸X線検査で,直腸S状部から口側に15cmの長さにわたり,壁の不整と伸展不良を認めた.病変の中央には,1.3×1.2cmのバリウムの溜まりが認められ,辺縁部には,粘膜下腫瘍様の隆起部分が存在した.大腸内視鏡検査下の生検で大腸癌と診断し,高位前方切除術を施行した.切除標本では,縦径8.0cm,横径6.0cm,高さ2.5cmの境界の比較的はっきりした,立ち上がりの緩やかな隆起性腫瘤を認めた.潰瘍およびびらん部でのみ癌が表層に露出していたが,腫瘍はほとんどの部位で非癌大腸粘膜に覆われていた.腫瘍は高分化腺癌で,粘液産生の著しい部位が広い範囲に存在した.