微小表面型大腸腫瘍のX線診断―その基礎と診断の解析
著者:
渡二郎
,
白壁彦夫
,
池延東男
,
梁承茂
,
前納健二
,
新原享
,
佐々木伸一
,
富田秀人
,
天野穂高
,
加藤直人
,
高木直行
,
早川尚男
,
池上雅博
,
下田忠和
ページ範囲:P.889 - P.901
要旨 5mm以下の表面型大腸腫瘍119例128病変(表面隆起型78病変,表面平坦型3病変,陥凹をみる型47病変)のうち陥凹をみる型を主な対象とし,X線の立場で拾い上げ診断の現状と撮影手技を検討した.また,得られた病理割面像の解析から臨床像(X線像・内視鏡像)の分析も同時に行った.ルーチンX線検査を施行した陥凹をみる型46病変のうち13病変(28.3%)を拾い上げ,後のX線像の見直しで発見した病変を含めると計22病変(47.8%)を描出した.また,腹臥位撮影がなくしては診断できなかったものが8病変(25.0%)あった.中心陥凹の描出には"網の目像"の描出は必須条件ではなかった.病理割面像を解析すると,内視鏡的粘膜切除術で得られた材料は非生理的に過伸展された状態であった.この条件下で,臨床像との評価に耐えうる病理割面像は表面型腫瘍全体の60.9%で,更にこの中でも臨床像との一致をみたものは61.5%(表面隆起型61.5%,表面平坦型50.0%,陥凹をみる型64.9%)であった.陥凹をみる型のうち,いわゆる相対的陥凹の病変がその多くを占め,胃のⅡcとは形態的に異なった.また,臨床像(X線像・内視鏡像)から腫瘍の拡がりを確実に認識することは未だ内視鏡的検査でも難しい.X線検査は総合的な診断では内視鏡検査に劣るが,拾い上げ診断には寄与するところが大きい.X線診断の領域は,経過を追求できる像を残すことと,その客観性のある像の解析にある.