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胃と腸ノート
大腸sm癌の“non-lifting sign”
著者: 宇野良治1 棟方昭博1
所属機関: 1弘前大学医学部第1内科
ページ範囲:P.910 - P.910
文献購入ページに移動Fig. 1は,S状結腸の9mmの高分化型腺癌である.中央がわずかに陥凹しており,Ⅱa+Ⅱcであるが,表面性状はノッペリとしており,びらんもなく,これだけではm癌かsm癌かの区別すら不可能である.そのため,病変の辺縁3か所に色素入りの生理食塩水を注入したところ,隆起病変の肩の部分が完全に消失し,色素が透見される注入部位のみが隆起し,病変全体は挙上せず,むしろ相対的に陥凹した.この所見(non-liftingsign)から,smへmassiveに浸潤した癌と診断し,開腹手術の治療を選択した.隆起しなかった原因を組織学的に立証するために,開腹手術前日に色素を注入したときと同様に墨汁を注入した.手術により摘出された病変の深達度はsm2であり,墨汁は癌組織の手前で.止まっていた(Fig. 2).粘膜下組織に浸潤した癌の周囲では,密に交錯する線維増生が生じており,これが粘膜下層で剥がれなかった原因であった.
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