今月の主題 胃癌は変わったか―その時代的変遷
主題
胃癌の形態学的変遷と治療法の変化
著者:
中島聰總1
太田惠一朗1
石原省1
山田博文1
松原敏樹1
西満正1
所属機関:
1癌研究会附属病院消化器外科
ページ範囲:P.51 - P.58
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要旨 1946年から1990年までの癌研究会附属病院における胃癌症例10,486例の形態学的要因の変遷を観察し,それに伴う治療法の変化と成績を検討した.過去45年間に腫瘍の進展程度は早期の方向ヘシフトし,上中部癌と未分化型癌の相対的増加が特徴的であった.治療法の変化としてはリンパ節郭清の徹底化,根治手術を目指した合併切除術の増加,術後補助化学療法を施行した症例の増加などが特徴的であった.その結果,1940年代と1980年代を比較すると治癒切除率は45.5%から84.5%に増加し,その5年生存率は43.0%から75.9%に増加した.直接死亡率は9.6%から1.3%に減少した.術後生存率から治療法の原則を検討すると,Stage Ⅰでは縮小手術を心掛け,補助療法は不要であり,Stage Ⅱ以上の進行癌では絶対治癒切除を意図して,十分なリンパ節郭清と切除範囲を確保し,術後の補助化学療法を施行する.リンパ節郭清についてはR-n=1となるように留意し,過剰あるいは過小郭清は避ける.このため,術中迅速生検による正確なリンパ節転移の把握が必要である.