今月の主題 胃悪性リンパ腫―診断の変遷
主題
胃悪性リンパ腫の病理形態診断と鑑別―その変遷
著者:
遠藤泰志1
渡辺英伸1
岩渕三哉1
味岡洋一1
加藤道導1
前島威人1
西倉健1
太田玉紀1
所属機関:
1新潟大学医学部第1病理
ページ範囲:P.1013 - P.1025
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要旨 過去29年間に,初回組織診断でreactive lymphoid hyperplasia(RLH)とされた55例中44例(80%)が,見直し組織診断では悪性リンパ腫(ML)であり,その多くがMALTomaの所見を有していた.RLHの頻度は3.5%(7/200)と,従来考えられていた値より低値であった.初回組織診断でのRLHの割合は,1965年から5年間隔にみると,年ごとに減少していた.この原因は,1956年の濾胞性リンパ腫の概念確立,1958年以後のRLHの提唱,1983年からのMALTomaの提唱などで,胃リンパ組織病変の組織診断基準が変化したことに起因すると考えられた.見直し組織診断された胃MLの組織型を年代別にみると,1975年以降,中細胞型MLが増加し,大細胞型MLは減少していた.しかし,肉眼型(表層拡大型と腫瘤形成型)の割合は年代別にみても,変化していなかった.MLの初回生検正診率は64%(29/45)であったが,組織標本を見直すと,45例全例がMLであった.45例の,総標本数に対するリンパ腫陽性標本数は,73%(163/224)と高かった.生検組織診断の一助として,細胞増殖指標(Ki-67免疫染色)や異常蛋白発現(p53免疫染色)も有用と考えられた.