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文献詳細

雑誌文献

胃と腸28巻12号

1993年11月発行

今月の主題 消化管ポリポーシス―最近の知見

主題

Peutz-Jeghers症候群と若年性ポリポーシス―病変の形態形成機序と腫瘍化

著者: 太田玉紀1 渡辺英伸1

所属機関: 1新潟大学医学部第1病理

ページ範囲:P.1268 - P.1278

文献概要

要旨 Peutz-Jeghers(PJ)ポリープ90個と若年性ポリポーシスまたはポリープ34個に対し,各種粘液染色,増殖細胞指標のKi-67染色,筋特異性アクチン・Ki-67二重染色,およびp53免疫染色を行い,ポリープの主な構成上皮の種類,形態形成機序,樹枝状平滑筋束の形成機序とポリープ内での腫瘍形態発生を検討した.PJポリープは主に,胃では成熟型腺窩上皮の過形成(増殖帯長は正常~短縮,固有胃腺は萎縮),小腸では成熟型絨毛上皮の過形成(増殖帯長は正常~短縮,陰窩長はほぼ正常),大腸では成熟型粘液上皮(増殖帯上方の上皮)の過形成(増殖帯長は短縮)から成っていた.粘膜筋板や樹枝状平滑筋束の平滑筋細胞は筋特異性アクチン陽性,Ki-67陰性であった.PJポリープでは上皮過形成が小区画性にみられ,それらが憩室様に粘膜下層へ侵入し,小区画間の粘膜筋板は粘膜側へ凸に屈曲し,ついには融合することで,樹枝状平滑筋束が形成されていた.このほかに,胃PJポリープでは粘膜内の平滑筋束(肥大平滑筋から成る)が樹枝状平滑筋束を形成することもあった.いずれの場合でも,平滑筋は新生されたものではなく,既存のものが肥大したものであった.胃若年性ポリポーシスは腺窩上皮の過形成を主体とし,増殖帯長は延長ないし正常で,幽門腺は正常ないし増生,胃底腺は偽幽門腺化生を示した状態で,幽門腺の状態と近似していた.間質拡大はポリープ表層部のみで,それ以下は狭い間質である点が小腸・大腸の若年性ポリープと異なっていた.小腸・大腸若年性ポリープは,粘膜固有層表層部の浮腫・血管拡張・炎症細胞浸潤に続いて,増殖帯とその上方部分の延長が初期像であった.次いで,粘膜全層に及ぶ間質拡大,延長増殖帯の分断・分岐・蛇行や新生腺管がみられ,腺開口部の障害と腺上皮増加で,腺管の囊胞化,大小不同,不規則配列が形成されていた.PJポリープや若年性ポリープ内での腫瘍化は増殖帯で起こり,腫瘍細胞は非腫瘍細胞の管腔側への移動と共に,管腔側へ移行しながら増殖し,これらのポリープの増殖帯から離れた位置のポリープ表層に,腫瘍性病変を形成すると考えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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