icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸28巻12号

1993年11月発行

文献概要

今月の主題 消化管ポリポーシス―最近の知見 主題

大腸癌におけるp53遺伝子およびp53蛋白の病理診断学的意義

著者: 小井戸薫雄12 下田忠和1 池上雅博1 浅川博12 鳥居明2 戸田剛太郎2 佐野芳史3

所属機関: 1東京慈恵会医科大学病理 2東京慈恵会医科大学第1内科 3東京慈恵会医科大学第2外科

ページ範囲:P.1323 - P.1333

文献購入ページに移動
要旨 癌は複数の遺伝子異常の蓄積により発生するとされているが,特に癌抑制遺伝子であるp53遺伝子の異常が大腸癌をはじめ多くの癌で高頻度に検出されている.そこでp53遺伝子およびp53蛋白異常が大腸腫瘍の組織診断にどの程度応用できるか検討した.p53蛋白の過剰発現は,散発の腺腫では11.1%で,腺腫腺管表層に1~3個の細胞に認められた.このように,表層の腫瘍細胞にp53蛋白が過剰発現していても,癌と診断するのは無理があると考えられた.familial polyposis coli(FPC)の腺腫では,腺腫腺管全層に数個~十数個の陽性細胞がsporadicに45.5%みられ,散発の腺腫と異なり悪性度が高く,癌の初期病変の可能性が高いと考えられた.散発の粘膜内癌では66.0%(低異型度粘膜内癌は52.9%,高異型度粘膜内癌は89.5%),粘膜下浸潤癌では81.3%,進行癌では69.0%にp53蛋白の過剰発現した病変がみられた.また,低異型度粘膜内癌ではp53蛋白の過剰発現は陽性例の66.7%がsporadicにみられたが,癌組織の異型度が高くなるにしたがい,p53蛋白は癌組織にdiffuseに過剰発現した.このような傾向はFPCにおいてもみられ,p53蛋白の過剰発現は散発の大腸腫瘍やFPCの悪性化や癌の発育・進展に関与していると考えられた.進行大腸癌においてp53遺伝子のexon5~8に45.2%の異常が見出された.このように遺伝子異常を調べることにより,H・E標本で検出されない癌細胞の異常を免疫染色よりも客観的に捉え,腫瘍組織の補助診断となりうると考えられた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?