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文献詳細

雑誌文献

胃と腸28巻2号

1993年02月発行

文献概要

今月の主題 内視鏡的食道粘膜切除術 主題

食道癌に対する粘膜切除の適応―その病理学的基盤

著者: 岩崎善毅1 滝澤登一郎1 門馬久美子2 榊信廣2 吉田操3 小池盛雄1

所属機関: 1東京都立駒込病院病理科 2東京都立駒込病院内科 3東京都立駒込病院外科

ページ範囲:P.125 - P.132

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要旨 食道癌に対する粘膜切除の適応を検討する目的で外科的に切除された食道表在癌61症例87病変(sm癌41症例,mm癌13症例,ep癌7症例)と食道進行癌に合併した食道表在癌を含む食道表在癌全病変117病変(sm癌53病変,mm癌29病変,ep癌35病変)について深達度と脈管侵襲,リンパ節転移の頻度について検討した.深達度epの病変では脈管侵襲,リンパ節転移は全く見られず食道表在癌の粘膜切除の絶対適応となりうる.深達度epの診断で内視鏡切除され,切除標本の組織学的検討からmm1では,浸潤はごく限局し,脈管侵襲,リンパ節転移の可能性も低く,追加治療は必ずしも必要ではない.mm3以深の浸潤が認められた場合には脈管侵襲,リンパ節転移を認めることがあり,根治を目的とする内視鏡治療の対象にはならないと考えられ,外科的切除とリンパ節郭清を追加すべきと考える.mm2の浸潤が認められた場合には脈管侵襲は少ないものの未だ問題が残る.分割切除については最深達部が切除断端にかからないように切除されることが重要で,それぞれの切除片相互の位置関係が切除標本の再構築写真や切り出し写真と組織標本によって評価できるのであれば患者の“quality of life”を考慮した治療法として分割切除を行うことも相対的な適応となりうる.また食道癌は多発例が多く,内視鏡的粘膜切除後の厳重な経過観察が必要である.切除された材料から適切かつ十分な病理組織標本を作製することが内視鏡治療の根治性についての評価に重要であり,病理の対応の仕方が根治性の評価を規定すると言える.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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