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文献詳細

雑誌文献

胃と腸28巻3号

1993年02月発行

文献概要

特集 早期胃癌1993 ノート

胃癌の三角:病理学的にみた胃癌診断の考え方

著者: 中村恭一1

所属機関: 1東京医科歯科大学医学部第1病理

ページ範囲:P.161 - P.171

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要旨 胃癌の質的量的診断は,X線・内視鏡・生検病理組織検査を行うことによって完全になされ,それら検査法はいわば三位一体をなしている.しかしながら,日常診療においては,必ずしもそれら検査によって得られた資料がすべて良質であるとは限らず,病変の判読を躊躇するような場合がある.そのような場合,胃癌の三角を考慮することによって病変を判読することが可能となる.また,再検査においては無目的的にではなく,胃癌の三角から予測される所見の描出に重点を置くことができる.癌が存在するとは場があってはじめて存在しうるものであり,場なくしては存在はありえないから,場を無視して胃癌を論ずることはできない.胃癌の存在する場は本質的に異なる2つの粘膜(胃固有粘膜,腸上皮化生粘膜)に分けられ,癌組織型は2つの類に分けられる.それら粘膜と癌組織型とは[癌組織発生h:粘膜→癌組織型]で関係づけられている.一方,2つの癌組織型は肉眼型と転移様式において差異がみられ,[癌の性質c:癌組織型→肉眼型・転移様式]で関係づけられている.そうすると,推移的に[合成関係h・c:肉眼型・転移様式→粘膜]の関係が成り立つ.胃粘膜は定常的ではなく,経時的に変化する.F境界線によって胃という場を2つの領域(F線内部領域,F線外部領域)に分けると,場を構成する粘膜の質が決定される.すなわち,場と癌組織型と肉眼型は互いに関連していて,それぞれを頂点とした三角を形成している.これが胃癌の三角と呼ぶ所以である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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