表面型大腸腫瘍の経過観察
著者:
前納健二
,
藤谷幹浩
,
渡二郎
,
梁承茂
,
佐々木伸一
,
笹川真一
,
室井忠樹
,
仲淳一郎
,
加藤久人
,
高木直行
,
早川尚男
,
池延東男
,
池上雅博
,
下田忠和
ページ範囲:P.523 - P.531
要旨 1980年1月より1992年10月までの聞に大腸腫瘍の内視鏡的切除を行い,その後,経過観察された337例について検討した.また,その期間に診断された表面型大腸腫瘍192病変の合併病変と,そのルーチンX線検査の描出能について検討し,次のような結論を得た.①初回病変が単発であっても,多発であっても経過中に癌を見つける率は変わらなかった.また,腺腫例と早期癌を含む例を比較しても変わらなかった.②経過観察中に見つかった癌は,右側結腸に多かった.③内視鏡検査の見逃し率は,5mm以下で27.4%,6~10mmで12.5%であり,上行結腸,直腸,S状結腸で高かった.④表面型大腸腫瘍のルーチンX線描出能は,5mm以下のⅡa,Ⅱa様腺腫で60%,Ⅱa+Ⅱc,Ⅱa+Ⅱc様腺腫,Ⅱc,Ⅱc様腺腫(Ⅱc+Ⅱa,Ⅱc+Ⅱa様腺腫を含む)で46%であった.また,内視鏡検査で見逃された21病変のうち9病変が描出されていた.⑤Ⅱa,Ⅱa様腺腫は,隆起型腺腫,隆起型早期癌との合併が多く,17病変の表面型腫瘍が合併していた.また,進行癌との合併が5例にみられた.Ⅱa+Ⅱc,Ⅱa+Ⅱc様腺腫でも,11病変の表面型腫瘍の合併をみた.しかし,Ⅱc,Ⅱc様腺腫(Ⅱc+Ⅱa,Ⅱc+Ⅱa様腺腫を含む)では,隆起型腺腫との合併は少なく,表面型腫瘍との合併はなかった.以上より,表面型大腸腫瘍は,同時性にも,異時性にも多発するものが多く,経過観察では見逃し病変の拾い上げが重要である.