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今月の主題 十二指腸腫瘍 主題
十二指腸腫瘍および腫瘍様病変―文献的考察
著者: 両角敦郎1 藤野雅之1
所属機関: 1山梨医科大学第1内科
ページ範囲:P.621 - P.626
文献購入ページに移動要旨 十二指腸腫瘍および腫瘍様病変は比較的まれで,X線検査や内視鏡検査が進歩・普及し,十二指腸が胃の次に位置する臓器でありながら,食道・胃・大腸などほかの消化管の腫瘍に比べ,臨床的になじみの薄い疾患と言えよう.十二指腸腫瘍および腫瘍様病変は,症状を有する古典的な腫瘍,検査で偶然発見される小病変,免疫組織学的に同定される内分泌細胞腫瘍の3つに大別できる.われわれは,この観点から,十二指腸腫瘍および腫瘍様病変を分類し,頻度を中心とした一般的事項を検討した.小腸全体でみると,小腸腫瘍自体が少なく,非上皮性腫瘍の占める割合が大きく,欧米に比べカルチノイド腫瘍が少ない.十二指腸癌はX線・内視鏡検査の普及により,乳頭上部の癌,特に早期癌の発見が増えており,早期癌では下行部より球部に多いことがわかった.更に,十二指腸腫瘍および腫瘍様病変をめぐって,十二指腸腫瘍が少ない理由,十二指腸癌の組織発生,十二指腸乳頭部癌の取り扱い,カルチノイド腫瘍といった問題について考察した.十二指腸腫瘍が少ない理由として,小腸の解剖・生理学的および免疫学的要因,小腸の発生・分化の関与などが示唆された.カルチノイド腫瘍は内分泌細胞腫瘍をめぐる概念の認識がまず必要であり,早期癌を含む他の十二指腸小病変と同様,丹念な内視鏡検査や免疫組織化学検査の普及によって,新しい知見,認識が得られるであろうことを述べた.
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