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文献詳細

雑誌文献

胃と腸28巻8号

1993年07月発行

文献概要

今月の主題 大腸癌存在診断の実態―m癌を除く 主題

ルーチン注腸X線検査における大腸癌の見逃しとその対策

著者: 甲斐俊吉1 小泉浩一1 坂谷新1 石橋智子1 丸山雅一1

所属機関: 1癌研究会附属病院内科

ページ範囲:P.759 - P.774

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要旨 1986~1991年の6年間に癌研附属病院において初回X線検査で見逃された大腸癌14症例についてその原因を検討した.見逃し部位は右側結腸11例,左側結腸3例であった.見逃しの原因は腸管収縮と造影不良が多く,腸の重なり,読影ミスがこれに続く.回盲部・上行結腸では前処置不良による造影不良が多かった.これは腸内に貯溜する水分のためにバリウムが希釈され,粘膜面への付着不良が生じたためである.横行結腸,左側結腸での見逃しの原因は鎮痙剤を使用しなかったことによって生じた腸管収縮が多かった.今回の見直しで9例に所見があり,注意深い読影が多くの見逃しを防ぐと考えられた.9例のうち7例に一側変形を認め,拾い上げにおける側面像の変形所見の重要性が再認識された.以上より,以下の結論を得た.①腸管の収縮を防ぐには鎮痙剤使用,被検者の不安・緊張の除去が必要である.②多方向から重なりを避ける撮影を行うと共に,腸管の伸展不良には,圧迫が可能であればこれを行うことによって病変の存在を否定することが必要である.このとき,大量の空気の存在は有効な圧迫や,腸管の重なりを避ける際の妨げとなりやすい.③腹部手術歴があり深部大腸の造影不良が予想される症例では,高濃度バリウムを使用するなど造影剤の工夫が必要である.④見直し診断で一側変形を認めたものが7例あり,そのうち存在診断の根拠となったものが5例あった.⑤病院診療の場においても,胃癌の集団検診における精度管理や逐年検診の手法を取り入れ,見逃しを最少限にする努力がなされるべきである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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