icon fsr

文献詳細

雑誌文献

胃と腸28巻9号

1993年08月発行

文献概要

今月の主題 虚血性腸病変の新しい捉え方 主題症例

血行再建術後に発生した虚血性腸病変の1例

著者: 安原洋1 重松宏1 中山洋1 沢田俊夫1 佐藤明2 町並陸生2 武藤徹一郎1

所属機関: 1東京大学医学部第1外科 2東京大学医学部病理

ページ範囲:P.977 - P.982

文献購入ページに移動
要旨 患者は63歳,男性.18年間の糖尿病と高血圧の既往歴を認めた.閉塞性動脈硬化症に対して腎動脈下に大動脈を遮断し,大動脈の血栓内膜摘除術,大動脈~両側大腿動脈バイパス術を施行した.術後1病日に右下腹部痛,発熱,白血球増多がみられ,同時に心筋梗塞を発症した.腹部所見が比較的軽度であり,心筋梗塞急性期であったため禁食,抗生物質投与,輸液療法で保存的治療を行った.術後36病日の注腸造影で回腸~上行結腸瘻,回腸~回腸瘻が確認された.その後も経口摂取を開始すると消化管通過障害を訴え,炎症所見の増悪がみられたため,初回術後4か月目に回腸,上行結腸切除術を行った.病理組織学的所見で虚血性腸炎による粘膜の広範な脱落,再生と粘膜下の著明な線維化がみられた.また,粘膜下の小動脈にコレステリン結晶塞栓と漿膜下の中小動脈にも動脈硬化の所見を認めた.以上から動脈硬化症を基礎としたコレステリン結晶塞栓による虚血性腸炎が考えられた.患者は再術後2週間目に軽快退院した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?