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文献詳細

雑誌文献

胃と腸29巻1号

1994年01月発行

文献概要

今月の症例

1.Ⅱc型早期胃癌の1例

著者: 上村守生1 中野浩2

所属機関: 1豊田地域医療センター内科 2藤田保健衛生大学消化器内科

ページ範囲:P.8 - P.11

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〔患者〕37歳,女性.主訴:特になし.職場の検診で胃X線検査を受け,異常所見を指摘され来院した.入院時,身体所見,一般検査所見に異常は認められなかった.

〔胃X線所見〕胃角小彎に病変があることがわかっていたので,その部を中心に検査を進めた.二重造影法では,ゾンデを使い胃液を十分排除し,バリウムを約250ml注入し,充盈像,背臥位の第1斜位,正面の二重造影像を撮影後,Fig. 1のように透視台を水平,または少し起こしたところで,体を正面から第2斜位に何度も変換し,バリウムが胃角小彎を流れ,洗い流すようにした.正面から第2斜位にする段階で病変部にバリウムがうまく流れ,溜まるのが観察された(Fig. 1).病変部にバリウムがよく付着したところで,体をよじらせるようにし少し頭低位とし,病変が椎骨の向かって左側に外れるようにしてFig. 2の二重造影像を撮影した.不整形の淡い陰影斑の中に顆粒状陰影が認められる典型的なⅡcの所見が描出された.病変は厳密に言うと胃角上の小彎にあったが,ほぼ全体が正面像として捉えられている.不整陥凹に向かい粘膜集中が認められ,そのうちの幽門側からの粘膜集中点にはほかより深い不整陥凹が認められ,その部に潰瘍があることがわかる,全体像としては,Ⅱc+Ⅲとするよりは潰瘍を合併したⅡc型早期胃癌と診断した.深達度診断は陥凹内の顆粒状陰影が大型であったが,特に目立って大きく,陥凹面より高いことを予想させる結節状陰影もなく,陥凹辺縁に辺縁隆起,粘膜ひだの癒合などの所見もないので,粘膜内癌mとした.このX線像では,不整陥凹の辺縁の微細な不整が描写されていないので不十分である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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