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文献詳細

雑誌文献

胃と腸29巻1号

1994年01月発行

文献概要

今月の主題 表面型大腸腫瘍―肉眼分類を考える 主題 2.微小な腫瘍の肉眼分類について a.内視鏡の立場から

大腸の微小な腫瘍の肉眼分類―内視鏡の立場から

著者: 長廻紘1

所属機関: 1東京女子医科大学消化器病センター

ページ範囲:P.42 - P.44

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はじめに

 ある臓器におけるある病変は,その大小・時期によって通常は病名が変わらない.たとえば大腸の過形成性ポリープ(HP)は,点状でも扁平でも大きな有茎性となっても,特徴的な組織像(sawtooth patternなど)が得られればHPである.腺腫もそうである.腺腫は癌化するのでHPほど単純ではないが,腺腫・癌を一連の変化と考えることができるので,さほど問題はない.しかし,表面型腫瘍は,ある病変の一部分のみを,形態的特徴に基づいて取り出したものである.始まりから終わりまで表面型であるわけではない.逆に,大腸に限らず腫瘍は常に形態的に変貌するか,少なくともその可能性を持っている.形態のみで定義すれば,表面型に通常は入らない腫瘍も,少なくともある時期には,表面型ないし類似の形態をとりうる.ごく小さな病変の多くは表面型であるし,隆起性の癌が進行していくと,表層部分は逆に崩れて,外面のみを見るとsm癌,pm癌が表面型に見える.すなわち,“表面型腫瘍”ということばが病名としてふさわしいか否か,という問題がまずある.

 表面型腫瘍は,①純粋に形態学的に規定された雑多なものの集合なのか,②組織像も含めた単一病変なのか,が必ずしもはっきりしていない.多くの論者は心情的には②の立場に立ちながら,現実には①の行動をとる.これが表面型腫瘍をめぐる諸々の混乱のよってきたる因である.

 表面型大腸腫瘍(以下,表面型)は,その名称からいっても形態学的に定義すれば,能事畢り,であるはずであるが,なかなかそうはいかない.表面型は日本の大腸疾患の診断・治療・研究に携わるすべての医師の夢をのせたtermであり,大切に育てていかなければならない(その理由は後述).形態でまず規定し,更に,少々の形態変動に左右されない第2の因子でがっちり固めることが,表面型を曖昧でなく,皆で共通の言葉で語っていけるものとなしうる.表面型に固有のマークが特定できれば,表面型を,腫瘍のある時期の一過性のニックネームではなく,病名として使うことが可能になる.

 筆者は,表面型は肉眼的,組織学的(将来的には分子病理学的)に定義されるべき病変である,と考え,主張してきた.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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