今月の主題 胃底腺領域の分化型癌
主題
胃底腺領域の分化型胃癌―その病理学的特徴
著者:
遠藤泰志1
渡辺英伸1
人見次郎1
西倉健1
所属機関:
1新潟大学医学部第1病理
ページ範囲:P.1009 - P.1023
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要旨 胃の分化型癌(部分的分化型癌を含む)を,幽門輪から病変中心部までの距離によって,仮想胃底腺領域癌と幽門腺領域癌に分け,両者を比較することで,胃底腺領域分化型腺癌の特徴の抽出を試みた.胃底腺領域癌で,特にリンパ球浸潤癌の発生頻度が高かった.完全型腸上皮化生に類似した低異型度小腸型分化型腺癌も仮想胃底腺領域に多くみられ,この癌は細胞分化に富み,異型に乏しく,構造異型(腺管の蛇行,分岐,融合)が病理診断上重要であった.更に,仮想胃底腺領域分化型癌では有意にsm癌が多く,進行癌が少なく,0-Ⅱb型の表層拡大型分化型腺癌が仮想胃底腺領域にのみみられた.進行癌では4型が多く,3型が少ない傾向にあった.p53蛋白過剰発現は両領域癌の間で差はなく,両領域とも高異型度分化型癌で有意に高率であった.c-erbB-2蛋白発現も両領域の間で有意差はなかった.これら胃底腺領域分化型癌の特徴は,胃底腺粘膜内の腸上皮化生が完全型であることや,胃底腺領域の間質側の組織解剖学的特性に基づくことが示唆された.