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文献詳細

雑誌文献

胃と腸29巻10号

1994年09月発行

文献概要

今月の主題 胃底腺領域の分化型癌 主題症例

Ménétrier病の経過中に発生した胃底腺領域内の高分化型進行胃癌の1例

著者: 源利成1 磨伊正義1 浅井透1 上田博2 出口康1 大井章史1 太田孝仁1

所属機関: 1金沢大学がん研究所外科部門 2辰口芳珠記念病院外科

ページ範囲:P.1059 - P.1065

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要旨 患者は68歳の男性で,15年間にわたるMénétrier病の経過中に進行胃癌を発症した.入院時には既に癌性腹膜炎の状態であったため,強力な化学療法を施行したが著効は得られなかった.入院3か月後に両肺の癌性リンパ管症を併発し,死亡した.腹部に限定した剖検により腹水を伴った癌性腹膜炎が確認されたが,胃以外の腹腔内臓器原発の腫瘍は認められなかった.肉眼的には摘出胃の大彎を中心として脳回状巨大皺襞が存在し,その領域内に6.5×4.0cm大の腫瘍を認めた.組織学的には巨大皺襞の全領域にわたって腺窩上皮の過形成がみられ,粘膜固有層から粘膜下層にかけて腺管の囊胞状拡張が顕著であり,Mènètrier病に一致する所見であった.これらの巨大皺襞に囲まれて存在していた腫瘍は高分化型管状腺癌で,浸潤性増殖を示し,漿膜面に露出していた.粘膜固有層の一部には過形成性腺管から腺癌への移行を示唆する像が認められた.以上の所見から,本例はMènètrier病を基盤として胃底腺領域に発生した進行胃癌と診断された.今回の症例も含めMènètrier病と胃底腺領域癌の組織発生との関係について文献的に考察した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1219

印刷版ISSN:0536-2180

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